【映画「ミックス。」連載】脚本・古沢良太「スターが演じるに値する人物を描くことが僕の務め」

2017/10/21 17:15 配信

映画


――多満子や萩原のほかに、「ミックス。」の登場人物の中で、特に思い入れのあるキャラクターはいますか?

明るく元気な姉御肌の弥生(広末涼子)。古沢氏が、広末に合わせてキャラクターを膨らませていったのだとか(C)2017『ミックス。』製作委員会


弥生(広末涼子)かもしれませんね。この役を広末さんが演じてくれることになって、ちょっと人物像も変えましたし。最後、髪を染めてハジけちゃおうというのも、演じるのが広末さんだからこそ思いついたことで。というか、そもそも広末さんの卓球選手姿って、誰しも見てみたいじゃないですか(笑)。

あとは中華料理店の2人も面白かったですね。

――多満子たち行きつけの中華料理店・楊楊苑の店員の、楊(蒼井優)と張(森崎博之)ですね。

多満子(新垣結衣)らフラワー卓球クラブメンバー行きつけの四川料理店の中国人店員・楊(蒼井優)と張(森崎博之)(C)2017『ミックス。』製作委員会


最初に「張役は森崎さんで」って言い出したのは、プロデューサーの成河(広明)さんなんですけど、かなり初期の段階から森崎さんを押していて。それこそ、「新垣結衣」の次ぐらいに「森崎博之」が挙がってきたくらいですから(笑)。そんなに早く決めなきゃいけない役どころでもないのになぁ、なんて思ってたんですけど(笑)。でも、出来上がりを見て、やっぱり張を演じるのは森崎さんしかいないなと納得しましたね。

蒼井優さんも、やっぱりすごくて。お芝居はもちろんですけど、卓球も、最初は初心者だったのに、撮影を通じてぐんぐん上手くなっていったらしいんですよ。卓球指導のコーチも「こんなに素質のある人、見たことない」って言ってたみたいで。「小さいころからやってたら、世界的な選手になってた」って(笑)。蒼井さんの卓球のテクニックを見るだけで、お金を払う価値はある映画だと思いますよ。

…あっ、それと斎藤(司)さんもよかったですね。瑛太さんの上司役なんですけど、脚本を書き始める前から、この役だけははっきり、斎藤さんのイメージがあって。スタッフに「斎藤さんみたいな俳優さんにやってほしいんです」ってお願いしたら、本当に斎藤さんに決まったっていう。ですから、この役は唯一、当て書きです(笑)。

――また、卓球教室にいる怪しげで大柄な“女性”、ジェーン・エスメラルダ役の生瀬勝久さんの熱演も必見ですよね。

本当にやりたい放題ですからねぇ(笑)。生瀬さんは、ご自分から出たいとおっしゃってくださったんですよ。僕としては当初、他の役を考えていたんですけど、「僕は卓球をやりたいんだ」って言い張って、結局あの役を勝ち取ったんです(笑)。

――ほかに、お気に入りのシーンはありますか?

好きなのは“放水”のシーンかな。多満子と萩原の幸せな光景を入れた方がいいと思って、考えながら、悩みながら書いたシーンなんですけど、その甲斐があったかなと。

江島(瀬戸康史)と愛莉(永野芽郁)のシーンもいいですよね。二人とも、どんなイヤな役をやっても愛らしさがあるんですよ。僕は特に、芽郁ちゃんが試合後に拳を突き上げて「シャーッ!」って叫ぶ、あそこが好きで(笑)。実はあのくだりは脚本にはないんですけど、すごくよかった。あそこで愛莉が感情を露わにしたことで、「ああ、この子もこの子で必死だったんだな」っていうのが分かって、感動しました。

多満子の元カレ・江島(瀬戸康史)と、江島の今カノ・愛莉(永野芽郁)は、多満子&萩原(瑛太)ペアのライバルに(C)2017『ミックス。』製作委員会


――ともあれ、キャストの豪華な顔触れには圧倒されます。

僕も、こんなに素敵な俳優さんや女優さんが集まってくださるなんて夢にも思ってなかったです。最初は「こんなにスターばかりそろえてどうするんだよ」なんて思ったりしたぐらいで(笑)。でも、スターが演じるに値するような人物を描くことが脚本家である僕の務めだと、すぐに考えを改めて、それぞれのキャラを膨らませていったり、さらに作り込んで深みを出したり、いろいろと直していきました。今思うと、そういう修正作業が、作品にとっていい方向に働いたのかなと思っています。