宮藤官九郎が「監獄のお姫さま」で歴代最多11回目の脚本賞を受賞!

2018/02/17 08:00 配信

ドラマ

「監獄のお姫さま」で脚本賞を受賞した宮藤官九郎撮影=西田周平

2017年秋クールにかけて放送されたドラマを対象に開催した「週刊ザテレビジョン 第95回ドラマアカデミー賞」の全8部門の受賞作が決定し、脚本賞に「監獄のお姫さま」(TBS系)で多くの支持を集めた宮藤官九郎が輝いた。

仲間の冤罪を晴らすため、イケメン社長の吾郎(伊勢谷友介)を誘拐した馬場カヨ(小泉今日子)らおばちゃんたちの絆を描いた。宮藤官九郎ワールド満載の人物描写や、登場人物たちのコミカルなやりとりが視聴者の心をつかんだ。そんな宮藤は「池袋ウエストパーク」(2000年TBS系)の1回目から、最多の11回目の受賞となる。

――今回で11回目の受賞となり、脚本賞はもちろん、全部門で最多受賞記録となります。受賞の感想を聞かせてください。

最多受賞ですか、なんかすみません(笑)。このドラマを書いたきっかけは、3年前、「ごめんね青春!」(2014年TBS系)を作っていたとき、TBSの磯山晶さん(編成企画)と金子文紀さん(プロデューサー/ディレクター)と3人で「次はどんなドラマを作ろうか」と話したことでした。そのとき希望したとおりの理想的なキャストが3年がかりでそろったこともあり「このメンバーを集めておいて普通に手堅いドラマ作ってもしょうがないんで」と宣言しました。磯山さんと「木更津キャッツアイ」(2002年TBS系)を作ったのはもう16年前になりますが、あのころの情報量とスピード感でまたドラマを書いてみたくなった。ちょっと攻めるというか、ある意味、集大成のつもりで臨みました。

――まさに「おばさん版木更津キャッツアイだ」という評も寄せられました。攻めるものを作ろうと思ったのはどうしてなのでしょうか?

磯山さんがリアルタイムの感想をチェックしてくれたんですが、「時間が行ったり来たりするのが分からない」という声もあったみたいで、そういうのが苦手な人が増えているという感じはしますね。僕は、時間を巻き戻したり、時系列をバラバラにするのが好きなんですが、「視聴者はSNSをやりながら見ているから分かんないんだよ」という声もあったりして、確かにテレビを集中して見ていないだろうなぁと…。でも、僕みたいな作り手が(ながら視聴向けに)“ちょうどいい”ドラマをやってもしょうがない。むしろスマホを触っている指を止めたい、ドラマがスマホに勝ってほしいという思いでした。だからあえて、見ていて混乱するような、話がどこに行くのか分からないものを目指したんです。どこかで「それを今、俺がやんなきゃな」という勝手な使命感がありました。

――宮藤さんにとって磯山さん、金子さんはどんな存在なのでしょうか?

デビュー作からご一緒してますが、普段やらないことも磯山さん、金子さんと組むときはできる気がします。「監獄のお姫さま」はこの3人だからこそできた企画。3人のバランスがいいんですよ。金子さんは理系的な考え方の人なので、誰も気にしないようなことも気にしてくれる。だから、僕がその場の面白さだけで書いた台本じゃダメかと思い直せる。そして、磯山さんは客観的にこの作品がどう見えているかということを考えてくれるし、同時に磯山さん的に譲れないというか、趣味的な部分も持っている。どちらもドラマを作る人として信頼できるんです。かと言って3人だけで完結しているわけではなく、お互いに違う人とも組んでドラマを作っているわけです。外で受けてきた刺激や見たものを反映するからこそ長く続いているのかなと思います。僕にとっても、最初に連続ドラマを書いたとき(悪いオンナ「占っちゃうぞ」2000年TBS系)からの付き合いですから、ドラマ作りのベーシックな場になっていますね。ベースではあるけれど、このユニット自体も変わり続けているんですね。

――宮藤さん個人で見ると、「木更津キャッツアイ」から「ゆとりですがなにか」(2016年日本テレビ系)まで若い男性たちを描いてきたイメージが強いので、中年女性という題材は新機軸だったのではないでしょうか?

「木更津キャッツアイ」を書いたころは、主人公のぶっさんたちの会話がどんどんドライブしていくのが、自分としてもしっくりきたし面白かったんです。でも、今の僕から見ると、若い人たちの会話が、そつがないというか、本音で話していない感じがしちゃって、自分の思考が入れづらい。それよりは、おばちゃんたちのトークの方が、話題があっちいったりこっちいったり、言葉が出てこなかったりと無軌道で、入り込みやすい気がしたんです。それで3年前に磯山さん、金子さんと話したとき、「小泉今日子さんたちが刑務所の中にいてずっと仮想の話をしていたら面白いよね。それで年下の満島さんに怒られていたら…」と考えて、それなら何も事件が起きなくても書けるなって思ったんです。逆に今、「木更津―」のような話を書いてくれと言われたら、「ゆとりですがなにか」のように若い人たちがお互いに刺さることを言い合う形になっちゃう。それは自分のチャンネルとしてはありますけれど、「ゆとり―」でやったばかりだったので、今回はもっとどうしようもないことやりたかったんです。