鈴木亮平が主演を務める大河ドラマ「西郷どん」(毎週日曜夜8:00-8:45ほか、NHK総合ほか)。
同作の中で、西郷吉之助(鈴木)の生涯の師である、島津家の当主・島津斉彬を演じているのが、渡辺謙だ。
膨大な知識を持ち、日本の常識を覆すような壮大な政治哲学で時代をけん引。下級武士だった西郷を自身の庭方役に召し上げ、常にそばに置いていた斉彬。
カリスマ性に富んだ藩主を演じる渡辺に、役に対して感じていた思いや、斉彬と西郷の関係について、そして、現代における「大河ドラマ」の持つ意味などを聞いた。
――久しぶりに大河の現場に参加して、以前との変化などは感じますか?
北条時宗以来なので17年ぶりの出演ですね。
撮影方法の変化というのはいくつかありましたが、放送が始まってからのリアクションを見て、メディアの中のドラマのあり方と、“大河”のあり方が「あ、こんなに様変わりしているのか」と思いました。
以前と比べて、お客様の反応が早いことに驚いています。
非常に情報の流れ方が早いので、観客の中においても、メディアの中においても、我々がドラマの中で描きたい「思いもよらない展開」みたいなものがあまりにも早く駆け巡り過ぎている気がします。
だから作り手としては、お客さんに喜んでもらえるのかを丁寧に、かなり試行錯誤しながらやっています。
――「お客様の反応が早い」ということは、SNSの普及などが大きい要因になっているんでしょうか?
はい。賛否両論があったり、物議をかもすということは、(大河ドラマのような)“続きもの”に関して言えば、いいことだと思うんですよ。
それがいい方向に向かってくれればいいんですけど。
制作している中で、そういう声に左右されるっていう方はあんまりないんですけど、それをドラマ作りでどう反映していけばいいのかということはまだ答えは見つけられていないです。
でもこういう時代の中で、今のドラマって「世の中にこんなふうに発信されているのか」と非常に参考になって、面白い体験でしたね。
――斉彬は、視聴者からの「かっこいい!」という声も多かったですね。
役者の表現にしても、脚本の作りにしてもそうだし、ドラマや映画などの表現する媒体が、非常に分かりやすく気持ちを表現しちゃってることが多い気がしています。
だから、(斉彬は) 「この人が何を考えているのか分からない」感じにしたんですよ。
常にいい人であるわけでもなくて、悪い人なんじゃないか? という部分もにじませようと思っていて。
そういう人物は現代のドラマの中であまりいないので、面白がってくれるんじゃないかなと思いますけどね。
――斉彬という人物の魅力ってどういうところだと思いますか?
分かりません(笑)。これが魅力でしょ? って思ってやっているわけではなく、必死で幕末を生きている感じですね。だから、それは見る方にゆだねています。
僕自身がやっていて、「なかなか面白い人だな」と思ったところは、やらなきゃいけないことについては、真っすぐに指示をしていくところです。
だって、全く知識もなく、設計図もない中で、オランダの本だけを基に鉄を作るなんてことを(部下たちに)よくやらせたなと思いますよ。
それで数々の失敗もしてますけど、相当なエネルギーを持った人だったんじゃないかと思うんです。
そこが魅力というか、目を見張る人だったんじゃないかと思いますね。
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