――貴島彩理Pはじめ皆さんBL(ボーイズラブ)だと思って作っていないとおっしゃっていましたが、BLファンのニーズに結果的に応えつつ、一方でLGBTの人も不快にさせない、非常にバランスの取れた描き方だったと思います。
僕も最後までBLだという意識はなかったです。その一方で、デリケートな部分は大事にしないといけないなとも思っていました。男同士の恋という設定について、(吉田)鋼太郎さんと(林)遣都を始めキャストは誰も偏見を持っていなかったし、スタッフももちろんそうでした。たとえば、第2話で牧に好きだと言われた春田が「裏切られた気分だわ!」とキレる。その後、公園で牧を見つけたときに「さっきはごめん」と謝りますが、あれは台本にはなかったセリフ。でも、あの場面で春田として(男性を恋愛対象とする)牧に謝っておきたいと思って、その場で変えさせてもらったんです。監督との信頼関係があるからできたことですね。
――そういった俳優と監督のやり取りといい、キャストがアドリブも交えて自由にお芝居している感じといい、まるでセッション(即興の演奏)をしていたような現場だったんですね。
まさにセッションでした。それがすごく楽しかった。他のドラマではアドリブで役をふくらませてもカットされてしまうことも多いですが、「おっさんずラブ」チームはいい意味でアホというか(笑)。かなり大げさに言えば、僕が台本にないことを10個やって、それを全部入れたら台本にあることが全部なくなっちゃうんじゃ!?という場面でも、「まあやってみよう」と受け入れてくれる監督たちで。とにかくまた、このキャスト・スタッフでドラマを作りたいという気持ちが強いです。
――実際に「おっさんずラブ」の続編を、と期待する声は多いですが、田中さんご自身は続編をやりたいですか?
今回は人が人を好きになることを純粋に描いたけれど、最終回の後の世界を考えると、“好きになった気持ちのその先”の部分をどこまで描けるのか…。続編にもいろいろなパターンがあるけれど、僕はそこから逃げちゃいけないと思います。第7話のラストシーンでは僕と遣都で相談し、「春田は牧を好きになった上ですべてを受け入れ、きちんと愛していく」という形を、最後までやりきったつもり。だから、さらにこの先をと言われると、どうしようという気持ちも…(笑)。
あとは、「続編でこれをやりたい」と貴島(彩理)Pが新たなテーマを発見できるかどうか。彼女がゴーサインを出せば、確実に僕らはついていくと思います。
主演女優賞・長澤まさみさんの受賞インタビューは昼12時に公開予定。また、助演男優賞・吉田鋼太郎さんの受賞インタビューは8月10日(金)朝7時に公開予定。
取材・文=小田慶子
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