そんな鈴愛の“アイデア力”は、早い段階からドラマでたびたび描かれてきた。
古くは子ども時代、律の助けを得て作ったゾートロープや、高校時代に右耳をよりよく聴こえるようにするための“つけ耳”。漫画家時代に正人にフラれた鈴愛が原稿に涙を落とさないよう考案した“涙止めマスク”。
さらに、100円ショップ 大納言で働いていた第96回(7月21日放送)では、「ここで、品物以外のものを100円で売るっていうのはどうですか?」と、驚きのアイデアをいくつも提案していた。
曰く、OLやサラリーマンがストレス解消のため廃棄処分のお皿を割るという“体験”を売る、ある品物を「100円で売ってもいい」という人と「100円で買ってもいい」という人をつなぐ場を提供する…。「鏡に自分の顔を映すと『今日もきれいだね』って言うんです。イケメンの声で。これ絶対売れます!」とも言っていた。40歳目前の鈴愛が企画・開発した“鏡よ鏡”のアイデアは、すでに28歳当時に生まれていたのだ。
あふれるアイデアの持ち主・鈴愛だが、一方で“アイデアだけ”という面も。
漫画家時代、漫画のストーリーが浮かばず悩む鈴愛にユーコは「いつも鈴愛にはアイデアがある。問題は構成」「鈴愛の場合、どんぶらこっこと桃が流れてきました。そしてその次にはスイカが。そしてまたその次にはメロンが。…桃太郎は?」と揶揄(やゆ)していたし、鈴愛が漫画家を辞める決心をしたときには、師匠の秋風(豊川悦司)が「あなたは、アイデアがとてもよかった。言葉の力も強い。しかし、その構成力のなさは、物語を作る力の弱さは、努力では補えないと思います」と現実を突きつけた。
物語の構成とは、言いかえれば起承転結の流れだ。考えてみれば鈴愛の人生も、漫画家、100円ショップ店員、結婚、帰郷、センキチカフェ、おひとりさまメーカー…と、アイデアに引っ張られて展開している。そこには終始一貫した流れや信念はないように見える。
それでも、鈴愛は生きていかなければならない。
ドラマは“ものづくり”をモチーフにした最終章に突入した。最終回まで残り22話、アイデアウーマンの鈴愛にとってはここからが本領発揮だ。アイデアはあるがそれを持続・展開させられない宿命を持ったヒロイン・鈴愛の物語には、果たしてどんなエンドマークがつくのだろうか。
5日放送の第135回で鈴愛は、けがをした律(佐藤健)を気遣い、光江(キムラ緑子)と花野(山崎莉里那)が律のもとを訪ね、食事を差し入れる。一方、鈴愛(永野芽郁)は津曲(有田哲平)に再会し…。
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