<試写室>「遺留捜査」贅沢で“らしい”2時間は至福のとき

2018/09/13 05:00 配信

ドラマ コラム

家族の絆も描かれる(C)テレビ朝日


独断と偏見のレビュー


失礼ながら、最初に予告編を見たときに「何か懐かしいな」と思ってしまったのは私だけではあるまい。

4年前のドラマスペシャル第3弾の「バックドラフト現象」×「迫りくる炎」=「糸村、燃える!?」だ。あのストーリーもかなり衝撃的だったが、今回もかなりの…。

もちろん全然ストーリーが違うし、実際ちゃんとストーリーを見ていくと一切既視感はないので、安心して見てほしい。

ならそもそもそんなこと言うなよって話だが、「遺留捜査」を愛し過ぎてつい月島に移住し、マンションの更新タイミングで京都へ移住しようかと本気で考えた身としては触れずにはいられなかった。

それはさておき、最終回。事前情報だけでも実に豪華なのが伝わってくる。

ゲストヒロインとして舞台「シェイクスピア物語~真実の愛~」(2016-17年)や連続ドラマ「櫻子さんの足下には死体が埋まっている」(2017年、フジテレビ系)などで上川と共演したのも記憶に新しい、“連ドラ主役の申し子”観月が登場。

観月は「テレビで見ていた糸村刑事がそのまま目の前にいる!という感じでした」とコメントを残していたが、この2人が「遺留捜査」の舞台で一緒に生きているというのが見られるのは、「櫻子さん」好きとしても実にうれしい。

あのドラマとは全く異なる2人の言葉遣い、関係性、やりとりも見応えあるし、ちょっぴりにやにやしている自分がいる。

観月でいえば、娘役の山口まゆとの“親子感”があるような気が。どことなく面影があるような気もするし、観月演じる酒井の幼少期の役者さんもどことなく似た雰囲気があって、うまい配役だ

こういう細かい部分までリアリティーというか、気配りが感じられるのが長寿シリーズになるだけのことはある「遺留捜査」チームの仕事人っぷり。一度弟子入りしたいくらい。

それはさておき、何と言っても最終回の見どころは“マリコさん”こと沢口靖子が主役を務める「科捜研の女」とのコラボだろう。これは東映刑事ドラマっ子としては何ともたまらないし、普通に考えてぜいたくなコラボだ。

どの局面で出てくるのかは見てのお楽しみなので言わないが、予告編でも耳にした人はいるだろう。あの糸村が「マリコさん!」と呼んでいる。

糸村が女性を下の名前で呼ぶなんて珍しいこと極まりないのだが、それがマリコさんのマリコさんたるゆえん。糸村がどんな相手でもマイペースを貫くように、マリコさんも基本的にどんな相手だろうと自分のペースを貫くタイプ。

だから実はものすごく相性が良いコラボなのかもしれない。ただ、決して反発こそしないだろうが、絶対に交わることがない曲線を延々と描いていきそうな気もするのも確か。

2人が共存するためには周りのサポートが必要不可欠だし、2人とも“ムチャブリする相手”が必要だ。ほんと、早くマリコの登場シーンについて誰かと喜びを共有したいぜよ。

ちなみに、マリコが他の作品に登場するのは、“現行連続ドラマ最長”の19年を誇る「科捜研の女」の歴史の中でも初めてのことであり、上川と沢口は「竜馬がゆく」(1997年、TBS系)で坂本竜馬&おりょう夫婦を演じて以来、21年ぶりのドラマ共演となるそうだ。

その他、ある場面において無表情で自転車を漕ぎ、必死の形相で全力疾走する女性刑事(栗山)を追い抜く構図も糸村らしいが、以前も触れたがひょうひょうとしていて何を考えているか分からないくせに本当はすごく優秀な刑事であるというのも節々に感じられた。

もし制作の方々にムチャブリが許されるのであれば、「科捜研の女」のようにシーズン18までこのフォーマットを続けてほしい!とは言わないが、少なくとも年に一度、七夕に織姫と彦星が再会するように、糸村と視聴者を再会させてやってください。

まあ、視聴者の皆様を隠れ蓑に筆者が会いたいだけなのは言うまでもないかな。

文=人見知りシャイボーイ