――中園さんの脚本の魅力はどんなところだと思いますか?
女性らしさがあるところですかね。
男の女々しさをうまく表現していますし、男らしい男を描くときには、優しさを描いているんです。男から見た優しさとはまた違った描き方をされている気がします。
――ふき(高梨臨)のキャラクターは、中園さんの描くかわいらしい女性性が現れている気がします。
ふきは、「西郷さんから逃げているんですよね?」とか、「こうなんでしょ?」と慶喜に言うんですけど、ふき自身が思っていることは脚本には描かれていないんです。
意思があった方が、跳ね返すことができるんですけど、ふきの言葉は自分が悔しくなっちゃうだけなんですよね…。
――では、慶喜はなぜふきを身請けしたんだと思われますか?
自分が想像していないことを言ってくるからじゃないでしょうか。
征夷大将軍になっても、ふきは立場に関わらず意見してくるんです。そこに惹かれているんですかね。
あとは単純にきれいだからっていうのもあると思いますけど(笑)。
――慶喜には“ヒー様”という遊び人としての顔もありますが、その二面性はどのように表現しましたか?
扮装が変わればイメージも変わるので、変わったようには見えているかもしれませんが、気持ち的には同じです。
政治的なことに巻き込まれていって、自然と“ヒー様”の状態ではいられなくなっていくので、あえて変化は付けないようにしていました。
――さまざまな扮装をしていますが、お気に入りの衣装はありますか?
僕は、大河ドラマ「平清盛」(2012年)で後白河天皇を演じている時から、御所に行くときの衣装が好きなんです。あれはモードだと思います。
烏帽子の中には、実は内側にいろんな色がついていたり、隠れたこだわりがあるんです。そういう部分に日本人の“見せない美学”みたいなものも見えておしゃれだなと思います。
――“ヒー様”としては、吉之助と佐内と3人で友情を築いていた時代もありましたが、そこから吉之助への印象は変化しましたか?
その時代がなかったら、慶喜の気持ちはもっと楽だったなと思います。
昔の吉之助のことを知っているからこそ、それが弱みになって、躊躇してしまう気持ちも出てきてしまうんです。逆に吉之助には、どんな性格かも把握されていて、そこをうまく利用されているような感じがします。
戦で慶喜と吉之助がどうやって兵を動かしたり、前に出たり引いたりっていう心理戦をする中で、昔の僕の感覚を知られているからこそ、吉之助にうまくやられてしまったのかなと思っています。
だから実は、非常にやりづらい部分もありました。
――慶喜は吉之助に対する情が芽生えていたということでしょうか。
それもありますし、出会ったころの吉之助は自分より全然地位が低くて、そこからのし上がってきたと思っていたらいつの間にか追い付かれてしまったんですよね。
慶喜はこれ以上出世することはないので、吉之助が下から迫ってくる感じがプレッシャーに感じていたんだと思います。
――では最後に、慶喜にとって重要なシーンである「大政奉還」を撮影したご感想を教えてください。
状況的に対応して一枚のカードを切ったということだと思うので、感情的ではなく淡々と、周りの反応にも動じないように演じました。
ただ、今後何が起こるのかと内心はドキドキしているという感じはありました。
260年続いた徳川家を終わらせるということで、慶喜は歴史に名が残りますし、その判断をした男になるために大政奉還をしたという部分もあるのかなとも思います。
やらざるを得ないことだったので、慶喜にもいろんな感情があったんじゃないですか「えっこれ本当にやるの?」とも思っていたかもしれないですよね。
でも、慶喜の判断は間違っていなかったんじゃないかなと、今では思っています。
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