――鈴木さんとはシーンについて相談されましたか?
はい。すごく相談しました。“西郷どん”は、一般の人たちが犠牲になっても、とにかく慶喜を倒そうとしているんですけど、勝さんの言葉で自分がやってきたことは「全て天下万民のためだった」と思い出すんです。
そんな「江戸無血開城」のシーンでは、二人が話している薩摩藩邸の庭にすごく大きな桜の木が咲いてるんです。二人の会話の中で、ふっと庭に目をやると、美しく桜が咲いていて、花びらが散っていて。それを見て、言葉やせりふではなく、改めて「命の大事さ」に気付くっていうしぐさをするようにしました。
撮影の日、朝起きてからずっとそのシーンについて考えてたんですよ。
それで、現場に着いたら「こういう思いで、こういうふうに撮るのどう?」って監督に相談したんです。監督の素晴らしいアイデアもあって、すごくいいシーンになったと思いますよ。
――出会ったころの吉之助の印象と、「江戸無血開城」で向き合った時の吉之助の印象は違いますか?
顔つきも全然違う。俺が初めに撮影入った時は、「お待ちしてましたよ」っていうくらい“ウェルカム”な雰囲気だったんです。でも、今はもう空気違います。
亮平くんの中で、温かい吉之助の雰囲気から、ガラッと変えるような役作りをしてきたんだと思います。
――勝海舟が、吉之助を信用した一番の理由はどんな部分なんでしょうか?
一番は、斉彬(渡辺謙)さんが一目置いてたということがきっかけで、あとは、“西郷どん”に会った時に、なにか大きなものを感じたんでしょうね。
でも結局は、「江戸無血開城」で決断をしたということが大きいんじゃないでしょうか。
――遠藤さんは、大河ドラマに他とは違う思い入れなどはありますか?
(大河ドラマ)「武蔵 MUSASHI」(2003年)までは、大河で自分がどんな役で、どの場面で何をしたかって、あまり覚えてないんです。それまでは地に足ついてなかったんだと思うんですよね。
大河って、セットに威圧があるんです。一つ一つ作り上げているので、毎回力作ができ上がっているんですよね。だから、浮ついた気持ちで入っていくと地に足をつけられない。
それに、照明とかもものすごい高い能力を持ってる人がやっていて、独特の世界観がぶわーって表れてくるんです。俺、「西郷どん」の初日もちょっと“わたわた”現場に入っちゃって、そしたら最初に段取りを確認するときに襖の開け方も分かんなくなっちゃったんです。
それくらいセットがものすごい力があるんで、気分が宙に浮いていた若いころは、目の前のことをただやっていただけで、本当に記憶に残ってないです。
「真田丸」(2016年)くらいからかな、なんとか気持ちが地に着くようになっていったのは。それでも、やっぱり「よし!」ってスイッチを入れないとセットのエネルギーに飲み込まれますね。
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