――ポスターのコンセプトはどのように決めていったんでしょうか?
ポスターの依頼を受けて、どのようなものにしていこうか話し合っているうちにどんどんイメージが固まってきました。
主役の勘九郎さんがただ走っている写真を1枚でポスターにしても面白くないだろうと、勘九郎さんの持っていらっしゃるコミカルなどのキャラクター、役者としてのキャリアなどを凝縮して“時間”をそこに入れたいと思ったんです。
だから、ありとあらゆるポーズをとってもらって、多重的な動きで見せることで時間を表現しました。イタリアで起こった未来派(フューチャーリアリズム)という芸術運動があるんですが、その様式も引用しています。
――題字はどのようにデザインを考えていったんですか?
題字はどうやって描いたらいいのか分からなくて、すごく難しかったです。
文字自体をデザインすることも考えたんですけど、それよりも「いだてん」という言葉の持っている性格をビジュアルで見せられたらと思ったんです。
それで、ロゴも走っているように見えるといいなと思って、三脚巴(さんきゃくともえ)の形の絵柄を「いだてん」という言葉に乗せてデザインしました。
――横尾さんは、1964年の東京オリンピックもご覧になっているかと思いますが、今回のポスターでは当時の時代性を意識した部分はありましたか?
僕は、64年の東京オリンピックが始まる日から終わる日までちょうどヨーロッパに行っていて、日本にいなかったので、あってなかったような(笑)。
ポスターを作るときは時代性は意識することはせず、その時に生きている自分の実感を大切にしています。
今の時代についての自分の思いも自然と作品に現れますから、言葉を超えて伝えたいと思っています。
――このドラマは、2020年の東京オリンピックを背負う若者たちも注目している作品だと思います。何か若者たちにメッセージをいただけますか?
「いだてん」には若者の悩みも描かれているから、まずは見たらいいと思いますよ。「NHK」さんに代わって言っておきます(笑)。
僕の作ったポスターは、一人の人間の人生を表したものになっていて、そこには悩みも悲しみも苦痛も全部入っているんです。
勘九郎さんも、マラソンを走っている人のありとあらゆる感情を、顔だけじゃなく手足の動きなど全てで表現してくれているので、見てくれたらいろんなことが伝わるんじゃないでしょうか。とにかく見てくださいということですね(笑)。
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