――今までの大河ドラマとは違う部分の多い作品だと思いますが、どのように企画していったんでしょうか。
制作統括の訓覇圭さんと、「また面白いことやりましょう」って何となく話していたんです。
そしたら「大河ドラマでやりませんか?」と言われて。それを聞いたときには「これは大河になるのか? こんな大河今まで見たことないですよね(笑)」って話をしていたので、決定したと聞いた時は驚きました。
大河ドラマって、作者が視聴者から怒られることも多いじゃないですか。だから最初に思ったのは、「1年間どうやって怒られずにやっていこうかな」っていうことでした。
今のところは、大丈夫そうだなと思いながら作っているんですけど、放送されてから何か言われるようなことがあったらちょっと嫌ですね(笑)。
――今作の主人公を金栗四三と田畑政治に決めた理由をお聞かせください。
“オリンピック”に関するドラマを作るなら、日本人が初めてオリンピックに関わった時から物語を始めたいなと思ったんです。
その時代についてのたくさんの資料をいただいて、いろんな人について調べていったんですが、中でも金栗さんに一番シンパシーを感じたんですよね。本番に弱い性格とか、練習し過ぎるとか、いいなぁと思って(笑)。
「大河ドラマ」ということをあまり意識していなかったことも大きいかも知れないんですけど、僕自身は勝ち進んでいったり登りつめていく人にあまり興味がなくて、何かを目指していたのに、できなかった人の方が親近感が沸くんです。
金栗さんは、みんなの期待を背負って1912年のストックホルムオリンピックに出場したんですけど、走っている途中で気を失ってしまうんですよ。そういうところにすごく人間味を感じたんです。
でも、1964年の東京オリンピックまで物語を到達させたいのに、そこには金栗さんは特に関係していないので…これはまずいなと思って(笑)。
そこからまた、いろんな人を調べていって、もう一人の主人公は「田畑政治がいいんじゃないか」ということになりました。
僕もたくさん資料を読んだんですが、田畑さんはすごくオリンピック招致の中心にいて、東京にオリンピックを呼んだ人のはずなのに、具体的に「何をやったか」が全く残ってないんです。
その場に「いた」ということと、すごくいろんなことをしゃべっていたということだけが残っていて、よくよく調べたら、最終的にオリンピックの開催時には大事なポストから下ろされてしまったらしいんです。これは面白いなと思って。
僕自身はオリンピックに関わったことがないので、「金メダルを取った人」とかが主人公だと、すご過ぎてドラマ作れないなって思ってしまうんです。だからこそ、この2人にしようと思いました。
――阿部さんと勘九郎さんの演技を見て、どのように思いましたか?
勘九郎くんとは、歌舞伎で二度ほどご一緒させていただいたことがあるんですが、その時からすごくダイナミックなお芝居をする人という印象があって。今回もそういう姿を期待していたんですけど、かわいいなと思いました。
金栗さんって「かわいい人」なんです。というか、かわいくなかったらあんまり許せないようなことをしてるんですよ。人からお金をもらったり、家に寄りつかないとか、思いつきだけでいろんな事やったり、働いてなかったり。
だから演じている人に“かわいげ”がないと、視聴者の方々も金栗さんのことを好きになれないかもって書きながら思っていたんです。
少しだけですけど勘九郎くんのお芝居を見たら、かわいかったですし、熊本弁もいいなって思いました。
田畑さんに関しては、早口で何言ってるか分かんない上に字が汚い人っていう資料も残っているんですが、阿部くんにぴったりだなと思いました(笑)。
阿部くんならきっと大丈夫だと思うので、「どういう田畑さんになるかな」って楽しみですね。
田畑さんも、そばにいるとなんかしてあげたくなるような、愛されるキャラクターだったそうで、金栗さんとは違う種類だけど、同じようにみんなから好かれていたんだろうなと思っています。
――2人に、演技についての何かアドバイスはされましたか?
一切していないですね。ちょっとだけお芝居を見たら「あぁ、もう大丈夫だな」と思ったので。
勘九郎くんは運動神経がすごくいいんですけど、「けがしないように気を付けてください」っていうことだけは言いました。阿部くんには「泳ぐらしいよ」ってメールしたら、撮影の数日前なのに知らなかったみたいでびっくりしてましたね。それくらいです。
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