<試写室>「私のおじさん―」一家に一人欲しい“妖精”エンケン

2019/01/11 05:00 配信

ドラマ コラム

入社式とは名ばかりで…(C)テレビ朝日


独断と偏見のレビュー


このドラマの情報が解禁になった時「エンケンさんが妖精になる」と聞いて…名バイプレーヤ―に一体何をさせるんじゃテレ朝さんは!と思ったもので、そっちに気を取られて正直内容があまり入ってこなかったのだが、なるほどそういうことか。

このDVDを見終わった今ほど「百聞は一見にしかず」という言葉を使いたくなったことはない。頭の周辺にプカプカ浮いていた疑問符たちが一気に消えていった。

それにしても、三度の飯よりドラマが好きな筆者としては、エンケンさんよりむしろ主演=岡田結実ということに驚いたものだが、「女優宣言」の第一歩としてここで起用したのはうまいかも。

女優としては新人同然の彼女だが、もともとバラエティーで引っ張りだこの人気タレント。

彼女がドラマに慣れていない部分を業界慣れしていない新入社員の“オドオド感”で相殺し、バラエティー畑の彼女がバラエティーのADをやるという何とも言えない適材適所感。おかげで過去の出演作と比べて自然体の演技に見えた。

おまえは何様やねんという声がチラホラと聞こえてきたので、ここらでブレイク。

そして何はともあれエンケンさんですよ。バナナは駄目。いや、バナナは駄目よ。大事なことだから2回言ったけど、階段に座ってバナナは…あかん。

【写真を見る】バナナを持った遠藤憲一がひょっこり…♪(C)テレビ朝日


さておき、エンケンさんといえば、ふと笑みを消せば震え上がるくらい怖い顔…いや、怖い演技を見せてくれる名優なのだが、スイッチを切り替えると一気にコメディーまっしぐら。

かわいくて仕方ないエンケンちゃんになってしまうからあら不思議。あの笑顔は人を幸せにするし、確かにつらいことがあってもあんなふうに一緒になって敵に文句を言ってくれたら、たとえ解決しないとしても気が楽になりそうだ。一家に一人、エンケンありの時代がくるといいな。うん、怖いね。

それにしても「誰なんですか?」「妖精だよ」って、この二人のやりとりだけでも十分に楽しめるが、本作もキャラの宝庫だ。

イケメンは何でもありか!の城田のキラースマイル&ドSっぷりに、見た目は紳士なのにテキトー男が似合う田辺、もはや素なのか役なのか分からない戸塚の現代っ子感、“お局あるある”を地でいく(?)青木も捨てがたいが、個人的には2018年のフレッシュおじさんオブ・ザ・イヤーに選びたい“コテシン”こと小手伸也のキャラにひかれた。

恥ずかしげもなく言えば、「コンフィデンスマンJP」(2018年、フジテレビ系)で初めて顔と名前が一致した役者さんだが、それからあの独特のフォルム…じゃなくて存在感のある演技、ダンディーな声、まろやかな語り口、一歩間違えばゆるキャラグランプリに出場しそうなチャーミングさ…こんなにクセの強い俳優を見落としていたとは、われながらまだまだ甘いな。

イケメンの無駄使いならぬ、コテの贅沢使いとはこのことだってくらい、彼の“魅力”がふんだんに盛り込まれたキャラだ。喋り方もそうだし、クレームをつけられた時の木陰を利用した軽やかな責任逃れ、さすがとしか言いようがない。

相変わらず三輪祐見子GP、貴島彩理Pの“おっさん”の扱いのうまさには頭が下がる。

そしてアクの強いおじさんたちの一服の清涼剤となり得るのが、ドラマデビューの玉田志織。第1話ではちょこっと出ただけだが、一瞬で4月の軽井沢のように爽やかな風が吹いた。

いいコンビ(C)テレビ朝日


さて、冒頭の話じゃないが、自分ではまだまだ若いと思っていてもそろそろ徹夜が堪えるような体になってきた筆者はもうおじさんなんだろうか。

でも、たとえ面と向かって「おじさん」呼ばわりされてもいいから、岡田結実をそばで見守るというポジションになりたいものだ。

え? 駄目なの? 

あ、もう閉店ガラガラですか。

文=人見知りシャイボーイ