三上博史が登場人物全員“ワル”の作品で14年ぶり映画主演「みんな必死なクズでしたね」

2019/01/18 06:00 配信

映画 インタビュー

間宮役について「本当にクズをやろうと思ったんですよ」と三上スタイリスト=上山浩征(semoh)/ヘア&メーク=白石義人(ima.)


――本作はセットを倉庫内に建てて撮影したと伺いました。ドラマのセットって、部屋だったとしても壁が外れて、そこから撮ったりすると思うんですけど、今回はやはり四方を壁に囲まれた状態で撮影を行ったんですか?

そうです。だから、実際のラブホテルでも撮れるんですよね。でも、「できるねー」と言ってそう簡単にできるかと言ったらそういう話でもなくて。

例えば、今回は音声さんが一番苦労をしていて、というのも、ワンカットだからガンマイクを入れられないんですよね。「じゃあピンマイクを付ければいいじゃん」って思うんだけど、服を脱ぎ着するから、それもダメ。

そうなったらもういろんなところに仕込むしかないんですよ。それをミックスして。だから、サウンドデザインがものすごく大変だったと思います。そういう見えない苦労が各パートにあって成立したんだと思いますけどね。

――最初に「技術的にカットを変えられるところは変えるけど」とお話しされていましたが、実際、この映画は何本の映像でできているんでしょうか。

全部で何カットかは分からないんですけど、僕の分かる範囲で言うと、40数分のカットが2つ入っています。もうこれは狂気の沙汰ですよね(笑)。一瞬気を許すと見ている人が興ざめするっていう世界なので、僕らは突っ走るしかないんですよね。隙を与えないように。ちょっと休んじゃったら、それも全部映ってますからね。

――今作の登場人物は全員“悪いやつ”ですが、間宮を演じる上で意識したことはありますか?

最初、台本を読んだときには、本当にクズをやろうと思ったんですよ。で、どうやったらクズになるのかなって思って…「自分のままをやればいいんじゃん」って思ったんだけど、僕のクズさ加減とはちょっと違うし(笑)。

僕はあんまり完成した作品って見ない方なんですけど、今回は見ておかなきゃと思って何とか顔を背けながら見たんです。そのときの第一印象は「あー、やっぱりクズになってないわ」と思って、自分でガッカリしたんですね。

でも、自己弁護するわけじゃないけど、「それもそれでアリだな」って思ったんですよ。外側が腐ってることと内側が腐ってることはちょっと違って、「中は結構ちゃんと腐ってるんじゃないの?」って思ったんですよね(笑)。佇まいみたいなものはクズになっていないんだけど、「性根は腐ってるんじゃね?」みたいなところはアリかなと思って。

結構外側が腐ってるやつって、中は腐ってなかったりしますからね。だから、「意外とアリなのかもよ?」って思った。自分に甘い!(笑)。

――他の役者さんで、そういうクズの芝居がうまいなって思った人はいますか?

こう言われると「やっぱクズの話なのかな?」って思うんですよね。みんな“一途にクズ”じゃないですか。「そういうのをクズって呼ぶのかな?」って思ったり、「クズの定義って何?」って思ったりして。そういう意味ではみんな必死なクズでしたね。「そこまで全うしたら立派だよ!」みたいな(笑)。波岡君も酒井さんも魅力的だったし、2人と一緒にやれて本当に幸せでしたね。

僕、稽古の直前まで連ドラを撮っていて、いつもは1つ作品が終わったらインターバルを空けてから次の仕事にしていたんですけど、今回に関しては次の日から稽古をしなきゃいけないっていう状況で、せりふも入れられなかったんですよ。

だから、「ごめん、せりふまだ入ってないから台本持ちながら稽古でいい?」って言って台本を持ちながら稽古をしていたんですけど、そうしたら波岡君が「三上さん、最後にはどうせ帳尻合わせてくるんでしょ? 僕知ってますから」って(笑)。で、本番が終わったら「ほらね、やっぱり」って。