――落語を学んだり、資料を見たり、さまざまな役作りをしてきたかと思うんですが、円喬はどんな人物だったと思いますか?
円喬さんについては、少しだけ資料が残っているんです。音声は、雑音がひどくて聞き取れなくて、参考にならなかったんですけど(笑)。
先輩が落語やっているのを楽屋で見ていて、つまんなかったら変な間合いで笑ったりくしゃみして、邪魔していたっていう意地悪なところもあったそうですね。あと、一日4件はしごして落語を披露していたほどの、超売れっ子だったとか。そういうドライに生きてる部分もありつつ、師匠との関係には人間味があるんです。
とにかく、野暮なことが嫌いな人だったんだろうなって想像しながら演じていました。
――演じた中で気に入っているエピソードなどはありますか?
なんだろうな。森山未來くんが演じている、後の志ん生である美濃部孝蔵のことを、邪険に扱うんだけど、「美濃部くん」って“くん”付けでずっと呼んでいることですかね。
結構、他の人には言葉遣いが荒いんですけど、「美濃部」とは言わない感じ。なんか、「美濃部くん、美濃部くん」って呼んでるのが面白いんです。人間的にダメなところがある美濃部のことをちょっと愛しているんでしょうね。
――円喬の魅力はどんなところだと思いますか?
円喬さんは求道的であり、人を寄せ付けないような、背景に孤独があるところが僕は好きです。だからこそ、人間味があふれている美濃部くんに興味を持ったんだろうなと思います。
――孝蔵を演じている森山さんとは、一緒になるシーンも多いですよね。
歌も踊りも演技も上手い器用な役者さんですよね。森山くんと一緒に演技をするときには、生半可な芝居をやったら許してくんないだろうなっていう、ある種の緊張感があります。
森山くんと知り合ったのは、彼が20歳ぐらいの頃で、その時も僕が森山くんの先生の役だったんですけど、そういう役がまた巡ってきたなっていう思いがありました。
――森山さんの落語についてはどのように思いましたか?
僕が見たシーンは、(孝蔵が)落語家としてはまだ未熟で、できてない落語をやっているっていう場面だったんです。5分くらい一人で話していたんですけど、すごい気迫がありましたね。
撮影が終わって、森山くんが楽屋に飛び込んできたとき、咳き込んだあまりに手にコンタクトがポンって落ちて、そのコンタクトレンズを吸い込んじゃったんですよ。
その後コンタクトを失くすっていう(笑)。そんなことってあるんだって思いましたよ。
――2月10日(日)放送の第6回では、人力車を引いている孝蔵に円喬が落語を教えるシーンが描かれます。ドライなようにも見える円喬は、孝蔵のどんな部分を気に入ったんだと思われますか?
普通の落語家とは違う、不真面目なんだけどつついたら何か出てくるんじゃないかっていう魅力を彼に感じたんじゃないかな。それが、円喬さんにはない部分だったんだと思います。
「こいつ酒でめちゃくちゃだけど、なんとかしてやりたい」って、思ったんじゃないですかね。野暮なことは嫌いな人だから、ベタベタはしないんですけどね。
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