小手伸也、念願の舞台出演で「血肉を与える俳優たちと、ライブ感の中で面白くしていけたら」

2019/04/08 06:00 配信

芸能一般

「方法論の固定概念にとらわれず、演劇と映像で学んできたことをどちらにも生かしたい」と語る小手伸也


舞台とドラマ、映画双方の関わり合いから自分を高め、刺激になりたい


――小手さんの活動の主軸は、舞台ですか?

主か副かという考え方は最近しないようにしたんです。以前までは、僕の主は舞台であり、ドラマの現場では舞台での経験があるからこそ戦えるという自負がありました。

でも最近は、ドラマや映画の現場で学んできたことも多くなって、演劇をドラマに持ち込むという一方向のベクトルだったものが、ドラマで学んできたことを演劇に応用していきたいと考えるようになり、双方向の関わり合いの中から自分を高めたい、願わくば両方の業界にとっての刺激になりたいと思います。おこがましいですが(笑)。

――舞台の魅力とはどんなところですか?

僕がドラマや映画など映像の仕事が苦手だった一つの要因として、誰に向かってやっているか分からないという理由がありました。

現場に複数台のカメラがあって、それを監督さんの目線を通して、編集したものが電波に乗ってお茶の間へという、届け先が全く見えない。何に向かって集中して演技をしていけばいいか分からなかったんです。

逆に演劇は目の前のお客さんとダイレクトにつながり合える分、非常に明確で。だからこそ、「映像よりも演劇がやれればいい」というちょっと斜に構えたというか、ある意味逃げの姿勢がありました。

でも、ドラマの現場で経験を重ねていくうちに、どうすればみんなが喜ぶかを考えるというシンプルな結論としては、目の前の1000人が相手でも、顔の見えない100万人が相手でも同じだなと気付きました。

そのみんなの笑顔を見たいから、どうするか悩んでいるというクリエイターの姿勢自体は、テレビの現場も演劇の現場も変わらないです。

その上で、演劇ならではの楽しさを挙げるとするならば、やはりお客さんと一緒に作れること。演劇は、お客さんの反応とか空気を含めて初めて完成する芸能なので、その臨場感、一緒に世界を作りながら最前線で物語に触れる感覚は、演劇体験ならではだと思います。

ただ最近はSNSの発達で、一緒にドラマを盛り上げたり、リアルタイムで感想を共有したり、視聴者とメディアの垣根がより劇場化してきたような気がします。

――ドラマで演じる時と舞台で演じる時の気持ちの違いはありますか?

今はないですね。ドラマに苦手意識を持っていた頃は、そもそもカメラに向かってお芝居をする不自然さを感じていたんですが、そもそも舞台だってありますよね、客席を向いて芝居すること(笑)。

あとドラマの現場では、シーンごとにバラバラに撮るので、自分の中で芝居をつなげるという難しさはありました。

演劇は1回発進したら、2時間、3時間を真っすぐ進めるんですけど、映像だとそこがぶつ切りになったり、前後したり、集中力をどう維持したらいいか分からなかったんです。「泣いてたシーンを撮って、1日おいて、また泣いてるシーンの途中からいきます」みたいな…(笑)。 間が空いちゃうと、本当に難しくて。

でも同じ現場に何度も通って、連続して同じ作品に関わるようになってから、何となく身に着けることができた…とは言い切れないですけど(笑)。そもそもシーン稽古はバラバラだったりしますからね。そうやって何となくの共通点を見つけて、やり方が分かるようになったら、応用の仕方も思いつくようになるので、方法論の固定概念にとらわれず、演劇と映像で学んできたことをどちらにも生かしたいですね。