<試写室>「白い巨塔」岡田准一の“狂気”に満ちた笑みに戦慄

2019/05/22 07:00 配信

ドラマ

財前のよきライバル・里見(松山ケンイチ)は、財前のやり方に異議を唱えるが…(C)テレビ朝日


圧巻のオペシーンも見応え十分!


また、教授選への道筋や財前を取り巻く人々の関係性(細かい設定を除く)などはおおよそ原作通りなのだが、舞台が2019年ということで、こと“医療”に関しては最新の設定になっている。

人工知能による医学の発展によって、10年後には医師はいらなくなる…と告げる滝村の言葉とは相反して、財前は最新の医療技術や設備を武器に、アナログな攻防を繰り広げていく。

これまでも時代に伴った設定に変更されてきたが、今回の財前は腹腔鏡手術のスペシャリスト。序盤のオペシーンからその手技を存分に発揮している。このオペシーンでは、記者会見でも岡田自身が語っていたように、アドリブで緊迫感を持たせるようなせりふが次々と飛び出す。

岡田の手術着姿も貴重だが、“完璧”過ぎる財前は、手術中でさえも教授選を勝ち抜くための工作を重ね、そしてほくそ笑むのだ。この笑みがとにかく怖くて、“狂気”すら感じる。

冷徹な男・財前の行動は一貫して“汚い”し“優しくない”のだが、岡田はこの汚さを実にさまざまな表情で表現してみせた。

里見という男


最後に、財前と対になる存在として、第一内科・准教授の里見脩二も忘れてはいけない。今作では松山ケンイチが、持ち前のナチュラルさを十二分に発揮して演じている。

ビシッとしたスーツや白衣の着こなしからも、患者の命を第一とした里見の信条がにじみ出ているが、松山の細かい芝居が本作でも散見される。

教授に怒られた帰り、横断歩道の“白い”部分だけを渡る仕草や、「腹減ったな~」という一言だけで里見の人柄を表現するのが松山ケンイチの成せる技だろう。その透明感を持った里見が、第二夜以降どう動いていくのかにも注目だ。

そんな里見と財前が屋上でたそがれるシーンも印象的だ。屋上から見える景色には、白煙を吐き出す“鉄塔”がいくつも生えている。財前の母が暮らす岡山、最新の医療設備を誇る大阪の病院。名誉欲にとらわれた財前、患者の命を一番に考える里見。財前への愛をそれぞれの形で表現する本妻と愛人。さまざまな物の表裏が繰り返し反転しながら、人の命を糧にそびえ立つ白い巨塔の頂点を目指してひしめき合う姿は、変わる時代に変わらない何かを訴えている。

なぜ今、「白い巨塔」なのか。その理由はぜひ第五夜まで見届けて、自分なりの答えを見つけてほしい。