<いだてん>中村七之助、兄・勘九郎は「金栗四三像とぴったりなんじゃないかな」

2019/10/13 07:30 配信

ドラマ インタビュー

大河ドラマ「いだてん―」第39回では孝蔵(森山未來)と圓生(中村七之助)の慰問興行の様子が描かれる(C)NHK

金栗四三は「兄をそのまま見ているよう」


――長いお付き合いの七之助さんから見て、宮藤さんはどんな方でしょうか?

変な人です(笑)。なんかいつも照れている感じで、ずっとあのままです。一人で「クックックック」って笑ったりもしてますし、彼の中で書いていてどんどん膨らんでくるんじゃないんですかね?

もちろん大筋は元々考えていると思いますが、今回の「いだてん―」は特に初めから全部を書いているわけではなく、見た上で膨らませているんだろうなというのが分かりますよね。キャラクター一人一人に対しての愛情の深さとか「多分この人だったらやってくれるだろうな」と思いながら書いているのが伝わってきます。役者の生かし方と構成が合っていて面白いなと思いました。

――キャラクターに対する愛情を感じたとのことですが、七之助さんはどんな部分で感じましたか?

日本が戦争に負けるというのは、いくら関心のない人にとっても、とてつもないことだったそうです。

もう亡くなってしまったのですが、これは中村屋にいた最古参の中村小山三という門弟に聞いたのですが、彼は身体検査もわざと不合格になって戦争にも行かないというような人でしたが、街中で玉音放送を聞いた時、戦争について全然興味もなかったのに泣いて立ち上がれなくなったそうです。戦争のことを全然分かってなかった人にとっても、あの放送が、そして日本が負けたということが、日本国民にとっては衝撃だったんだなと。

圓生と志ん生はそれを日本じゃない国で聞くんですから、何かがわぁーと壊れますよね。圓生が孝蔵から「息子が高座に上がることになった」と聞いた時は「へぇ、そうなんだ」くらいだったと思うんですが、戦況が悪化して二人ともボロボロになり孝蔵が死んでやる、と言った時、圓生は「倅(せがれ)の高座、見るんじゃねえのか!!」って言うんです。

初めて圓生さんが感情をぶつけるシーンで、今はつらいかもしれないけど、その先の人生を生きていくことで未来があるんだよ、という。自分が高座に上がるのではなく、自分の息子の初高座がかなうという照れくささとその倅の晴れ舞台を見るんじゃねぇのか、というせりふをチョイスする宮藤さんのすごさと愛が好きだなって思いました。

――最後に勘九郎さん演じる金栗四三さんの魅力を教えてください。

金栗さんのストイックさはもう兄をそのまま見ているようで…。まぁ兄は熊本に帰らないようなそこまで非道な人間ではないですけど(笑)。でもそういう人の“欠如した魅力”というものがあるし、悪人ではなく純粋な人だからみんなが支えているというのがうちの兄にもぴったりというか。

また、ふざけているのではなく、真剣にやっていることが面白く見えるというのが、宮藤さんの描きたかった金栗四三像とぴったりなんじゃないかなと思います。