「キャストの力で大いに助けられた」桜井弘明監督がシリーズへの思いを語る<斉木楠雄のΨ難 Ψ始動編>

2019/12/26 12:00 配信

アニメ インタビュー

「アフレコをやってみたら、結局うまく収まったからいいや」


【写真を見る】「現場にいないとテンションが下がる」という声優を明かす桜井監督


――絵コンテや脚本を直す時など、「斉木楠雄のΨ難」 を制作する上で気を付けていたポイントは?

桜井弘明:第1期の時はこっちも手探りだったんですが、とにかく原作のセンスがいいので、脚本で余計なネタを入れないということですね。自分としても原作に対するツッコミを足したりしがちなんだけど、それをできるだけ抑えていました。

あとは、どうしても尺に収まらない時、どのせりふを切るかという問題は常にありました。「漫画ではこのせりふはOKだけど、テレビで放送する時は引っ掛かる」というような権利関係の問題もあるので、そこをどう置き換えるかも気を付けていましたね。

――原作付きの作品だと、せりふを削るのにも時間が掛かると思いますが、カッティング(編集)は大変でしたか?

桜井:そんなに長くはならなかったんですよ。できるだけ絵コンテの段階で尺を詰めるようにしていましたから。

ただ、どうしても30~40秒くらいオーバーするんです。たまに1分を超える時があると、4分の作品で1分を切る作業はすごく大変でした。

そうなるとせりふを削るしかないので、迷うことなくズバズバ切っていくんですけど、後で原作サイドから「ここのせりふは戻してほしい」と言われることも、最初のうちはありましたね(笑)。

――(斉木楠雄役の)神谷浩史さんも会見で、「最初は今よりせりふのスピードもゆっくりだったけど、途中で監督のミスから速くなっていった」というエピソードを明かしていました。

桜井:一度、修正で短くしたせりふをキャストに伝え忘れていたんだけど、アフレコをやってみたら、結局うまく収まったからいいや、ってことがあって(笑)。そこから多少、修正の仕方も変わりましたね。自分でしゃべっても入らないけど、このキャラなら多分うまく入れるだろうと。特に女性陣はそうでした。

――つまり、キャストの力で助けられたことも…?

桜井:それは大いにありました。なぜこんなスピードでクリアに聞こえるんだろうって。日本の声優さんはすごいなあ、と(笑)。

「何とか毎回アフレコに照橋さん(CV:茅野愛衣)を呼びました(笑)」


あえてテレビと同じフォーマットで制作した「Ψ始動編」にキャストからはブーイングも?(C)麻生周一/集英社・PK学園R


――「Ψ始動編」はNetflixでの配信となりますが、制作する上で、コンプライアンスの問題や放送尺など、地上波のテレビ放送との違いはありましたか?

桜井:違うところで言うと、コンプライアンス関係はまずあります。

あとは、今回は原作で残っている話をやろうということだったんですが、全世界配信だと伝わりにくいと思った話は外したりして、話の取捨選択は初めに多少ありました。でも、「これ大丈夫かな?」っていうエピソードも意外と入れられたりして。日本の文化をそのまま世界に発信しているエピソードなら大丈夫なのかなと。

あと、尺に関しては、本来なら配信作品は自由でいいわけです。でも、今までの流れと同じフォーマットでやった方がトータリティーが出るかなということで、「4分でやりましょう!」ということになりました(笑)。

制作発表の時、神谷浩史くんからも「おい! なぜ4分だ!」と言われましたが、「仕方ない、そういう作品なんだよ」と答えておきました(笑)。

それから、テレビアニメで第1期・第2期などを作る場合、普通はシリーズごとにオープニングとエンディングを変えるのが普通なんですけど、配信の場合はそれも気にしなくていいということで、本編に専念できたということもよかったです。

あとは、残った話で照橋さん(CV:茅野愛衣)が出てないと、神谷くんも僕もテンションが下がるので、何とか毎回アフレコに照橋さんを入れるとか、相卜(CV:喜多村英梨)を入れるとか、やっぱりメインどころのキャラはなるべく出してあげたいなと、原作にいなくても何とか隙間を埋めるように気を付けました。

桜井監督待望の照橋さんエピソードも配信(C)麻生周一/集英社・PK学園R