今回の賞を受けて、まずは選んでくださった皆さんに「ありがとう」って感謝したいですね。僕は尾花を演じましたけど、倫子役の(鈴木)京香さんをはじめ、素晴らしい共演者の方たちがいてくれたからこそ尾花も生かされたわけで。共演の皆さんのおかげじゃないかなと思います。
それは監督はもちろん、全スタッフにも言えることで。このドラマは試行錯誤を重ねた各部門のスタッフの総合力が作り上げたものだと感じています。塚原(あゆ子)監督とは初めてご一緒しましたが、とても柔軟かつ芯の太い方で。役名もせりふも持たない透明人間のように、“監督”という立ち位置で同じセットの中にいて、僕らを誘導してくれました。それぞれの役が一人の時間を過ごしていても、誰かのことを思ってる…その胸中も見事に映し出してくれたと思います。
僕がドラマで演じたのは尾花の人生のわずかな期間ですが、そこに至る気持ちのつながりはブレないようにしたくて。彼の生い立ちや現在までの経緯を自分の中にしっかり入れる作業をしてから尾花を演じました。
チームワークという意味では、グランメゾンのみんなのあったかさも現場に実在していて。待ち時間も誰一人控室に帰らず、そう広くない前室で横一列になって話してましたね(笑)。そんな現場から生まれた作品を見た人たちから、「あの時間帯にあれやられると腹減るんだけど」ってよく言われたんです。テレビからはにおいも味も伝わらないはずなのに、いろんな人の思いを乗せた何かが「あ、伝わったな」って。うれしかったですね。
僕自身もこの作品からは多くのものをもらいました。豊かな時間も、共演者やスタッフからの愛情も、現場で一緒にものを作る楽しさも。そうやって自分たちが生み出した作品を見た人が、その世界に興味を持ってくれることが僕の喜びでもあり、次の作品に向かう原動力になっていると改めて感じました。
(ザテレビジョン・取材・文=浜野雪江)
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