――ドラマソング賞を受賞した山下達郎さんの「RECIPE(レシピ)」についても教えてください。
塚原「実は、このドラマを始動したとき、企画書の段階で、山下さんにお会いしていたんです。だから、山下さんにとっての『グランメゾン東京』はこの曲なんですよね。それが物語と化学反応を起こしたと思います。ドラマ本編は内容を詰め込んだのでポンポンと速いテンポで進んでいくのですが、エンディングでこの曲がかかったことで、日曜の夜にふさわしい落ち着きが出ました」
青山「僕はもともと山下達郎ファンなんですよ。中学生のときに好きになって、アルバムも全部持っているんです。だからもう、うれしくて冷静に受け止められなかったんですが…。キャストの皆さんもこの主題歌が気に入って、『今回はこの場面で俺のセリフから流れるな』なんて予想していましたね(笑)」
――また中盤で展開した尾花、倫子、京野の三角関係も、アラフィフの恋という点で新鮮でした。
塚原「私は“大人の恋愛あるある”のつもりだったんですよ。40代ぐらいだと、勢いでとりあえずキスしちゃうとか好きだって言うとかあるよねと思っていたけれど、見た方たちはけっこう真面目に受け取ってくださったので『えっ』となりました(笑)。
京野は酔った勢いで告白するけれど、次の週にはなかったことになっていて、3人ともそれで関係が壊れるほどの子供じゃない。仕事の仲間というのが第一なわけで、“なんとなく好きかもしれない3人”という描写にトライしたつもりなんですが、解釈はみなさんにお任せします」
青山「僕もあまりロマンスとはとらえていなかったけれど、最終話、倫子が尾花に抱き着くシーンを現場で見ていたら、なんだか涙が出てきました。好きな気持ちを押し殺しているとも見えるし、逆に恋愛でなくても大人の男女の絆ってあるのかなと思いました」
塚原「演じている木村さん、鈴木さんには『尾花にとっての倫子』『倫子にとっての尾花とは』という考えが明確にあるはず。そこはもう完全にお任せしています」
――尾花があえてグランメゾン東京を去り、倫子の料理で勝負させるという結末は初めから決まっていたのですか?
塚原「そうですね。これは主人公が天下を取る話じゃなくて、みんなの努力の結果である料理が天下を取る話。尾花がリーダーのままではありえないと思っていました。『七人の侍』の侍も最後に村を去っていくじゃないですか。本当に助けてくれる人というのは、周囲の人に自活と成長を促すと思うんです。
最終回のあたりはもう、尾花は本当に木村さんだなと思いながら、編集作業をしていました。クランクアップのときは、木村さんと『さびしいなぁ』という話もしましたね。ここまで毎日、尾花のことを考えていたのに、明日から、それがなくなるというのがしょんぼり。寂しかったです」
取材・文=小田慶子
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