二階堂ふみ、「エール」で見せる“少女漫画のヒロイン”感 コミカルな演技&繊細な乙女心を両立

2020/05/02 07:00 配信

ドラマ

全力でぶつかりながら相手役を輝かせる


少女漫画の実写化はよくある。いわゆるキラキラ、スイーツ映画やドラマと呼ばれるものだ。実は二階堂はその手の作品にはほとんど出ていない。どちからというと少年漫画原作ものに多く出ている。

ヴェネツィア国際映画祭の新人賞マルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞した代表作「ヒミズ」(2012年)や「日々ロック」(2014年)、「いぬやしき」(2018年)など。

また、「リヴァース・エッジ」(2018年)などのサブカル系漫画や「生理ちゃん」(2019年)などのコミックエッセイ系などがあり、公開待機作、手塚治虫の「ばるぼら」は大人向けの漫画。

キラキラ少女漫画ものは「オオカミ少女と黒王子」(2016年)がある。ドS王子に翻弄される恋愛経験なしの女子高生を、相手役の山崎賢人(※「崎」の字は正しくは「立つさき」)を最高に立てて演じていた。

少女漫画は男の子がどれだけ素敵かが大事であることを理解して、余計な自意識を出さないところが二階堂のかっこよさだと思う。ひたすら相手役のことを思って一喜一憂するヒロインの感情を揺るぎなく演じ続けるのである。相手役がリードギターだとしたら、二階堂ふみはベースかドラムかもしれない。

「エール」第25回より (C)NHK


求められる役割を確実に演じきる職人性が二階堂にはあって、だから少年漫画であろうと大人向け漫画であろうと、なんでもござれなんだろう。

その才能が大いに生きた作品が、大ヒットした映画「翔んで埼玉」(2019年)であった。少女漫画雑誌に連載されたギャグ漫画の主人公を原作にかなり寄せて演じた。

原作者・魔夜峰央の漫画は主人公もその恋人も美少年ばかり。少女漫画ならではの倒錯的な世界で、二階堂の役は見た目は美少女な少年で、生徒会長というカリスマ性があり、夢のように繊細で、でも性格はちょっとキツイというところを二階堂はみごとに演じきった。

金髪できつくパーマがかかったヘアスタイルが様になるだけでも凄いが、キャラがわーっと喚いても美少年ぽさはキープ。ハイテンションで攻撃的だが、恋をしたときの可愛げは徹底的に。

ここでもやっぱり、相手役であるGacktの輝きを決して損ねない。三歩下がって相手を立てるのではなく、有り余る彼のパワーをさらに増幅するように自身も全力でぶつかっていくのである。

まさに、音が第4週の見合いの席で宣言した「私は男の後ろを歩くつもりはないから 結婚したとしても私は一緒に歩きたい」みたいな感じであろうか。ただ、三歩下がる役を演じることになったら、それすらしっかりやれるのだと思う。

関連番組