そして何より作品を貫くのは、榎本径(大野智)の圧倒的変わり者…もとい、大物感。
国民的アイドルグループのメンバーでありながら完全にそのオーラを消し去った大野が演じる榎本は、無口で感情というものが読み取れず、直線で動いたり角を直角に曲がるなど、その動きからも杓子定規っぷりがうかがえる。
だがひとたび鍵や防犯、密室の話題になると途端に饒舌(じょうぜつ)になり、テンションには変化ないながらも膨大な知識を早口でまくし立てはじめる。あきらかに“スイッチが入った”状態だ。
そんな凸凹トリオが難事件に挑んでいくのだから、本放送時には2012年の連ドラ版が全話平均16.0%、2014年のスペシャルが15.9%、そして5月18日に放送された「―特別編#2」は再放送ながら世帯視聴率11.0%、個人視聴率6.6%と、いずれも高視聴率を獲得しているのもうなずける(数字はビデオリサーチ調べ、関東地区)。
推理ドラマ好きも推理ドラマ嫌いも文句なく楽しめる良作だ。
加えて、ゲストの豪華さも同作の見どころ。25日放送の「―特別編#3」では佐野史郎、黒木瞳、藤木直人らが出演。誰が犯人かはもちろん明かせないが、誰が犯人でもいずれ手ごわい顔ぶれで、ただでさえ緻密(ちみつ)な密室トリックがさらに高度に思えてくるから不思議。
「SUITS/スーツ2」の蟹江貢(小手伸也)が顔を出して世界観をつなぐのも、同枠ファンにはうれしい遊び心だ。
練り上げられた密室トリックに加え、芹沢が端々で“推理ドラマのお約束”にツッコんでいく展開も楽しい「鍵のかかった部屋」。ただ一つ残念なのは、毎回密室トリックゆえに“崖での自白シーン”がないこと。
芹沢さんが「なんでわざわざ崖なんだよッ!」ってツッコむところも見てみたかったな。
文=福田歩
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)