このドラマ、誰も見たことのない林遣都が登場する。それも3人も!
冒頭度肝を抜くのが、ドヤ顔でリモート会議を仕切りまくる次男・勇人。スーツを着こなしてはいるが、デキる男…とはやや違うチャラさとテキトーさが漂う。嬉々としてスタンディングデスクを上げ下げする姿が何ともほほ笑ましい。
そして、同じ顔ながら勇人とは正反対で軽さが微塵もない長男・泰斗。「決まりは守んなきゃ」とソーシャルディスタンスを頑なに死守し、「オンライン会議は空気読めないから。結局なんだかんだ言って人と人は直接対面しないと」と、どうやら“新しい生活様式”にうまくハマれていない様子。
さらに、新鮮な野菜を手に2人の前に現れたのが、三男の三雄。やはり同じ顔だが三雄は天真らんまんな末っ子そのもので、勇人に求められるままに「春日谷麺めん」のCMのモノマネを披露し、泰斗が作ったバターラーメンを「おいしいよね」と嬉しそうに頬張る。
そんな三雄に思わず声をそろえて「かわいい(笑)」とデレてしまう2人の兄。もう!3人ひっくるめてかわいいぞ!まさに“林遣都のフルコース”とも言うべき作品なのだ。
とはいえ、彫りの深い顔立ちで人気の林遣都氏。濃いめのお顔が3つ並ぶとくれば、「そのフルコースちょっと胃もたれするかも…」という思いを持たれる向きもあるかもしれない。しかし、それも心配には及ばない。
なにしろ「おっさんずラブ」(2017年、テレビ朝日系)で牧凌太を演じ、ドSキャラの奥に寂しさを忍ばせて全女子を夢中にさせた林遣都のこと。
自分の居場所を手に入れた勇人のイキイキとした表情、泰斗が母親のバターラーメンの味を思い出そうとするときの懐かしそうな瞳、わが子の絵を眺める三雄の誇らしげな笑顔。
一つひとつのしぐさや表情はどれも、見ているこちらも身に覚えがあるほどリアルで愛おしくて、画面の中に生きる3人が「林遣都」という一人の俳優だということを忘れさせてしまう。ドラマには、新型コロナウイルスのパンデミックから社会が立ち直りつつあるまさに今の状況が描かれている。通常のドラマ制作よりもはるかに短いであろう期間で3人分のキャラクター造形をやってのけた林の能力には目を見張る。
“フルコース”とはいえ、それはコテコテの中華料理や濃厚ソースのフレンチではなく、滋味深くて毎日食べても飽きることのない“我が家の味”のそれなのだ。
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)