朝ドラで描かれる地元とは、主人公の原風景であり、そこには父母、祖父母や兄弟、姉妹、幼馴染などがいて、彼らとの交流によって人格が形成されていく。
人生経験豊富な祖父母が主人公に生きる意味を教えてくれたり、幼馴染との友情にじんわりしたり、朝ドラ名物・ダメな父に困らされたりと、地元のエピソードは重要である。主人公の幼少期を子役が演じていることも多く、その子役の愛らしさも伴っていい印象が残る。
朝ドラの主人公には、生まれた土地を出て都会に働きに出るというひとつのパターンがあり、兄弟姉妹や幼馴染が地元に残り、伝統を引き継ぐことが多い。「エール」の裕一と浩二はまさにこの関係である。
(※以下、一部「エール」以外の朝ドラに関するネタバレが含まれます)
「なつぞら」ではヒロインなつ(広瀬すず)がアニメーターになる夢を叶えようと東京に出て、心の友・天陽(吉沢亮)は地元で農業をしながら絵を描き続け、その対比を描いた。
「スカーレット」はヒロイン喜美子(戸田恵梨香)が十代のうち数年間、大阪で働いただけで、あとはほとんど信楽で生活する稀有なパターンであった。
一方、朝ドラレジェンド「おしん」(1983年)は1年間の大作だったこともあってか、故郷・山形、東京に働きに出て結婚して、夫の地元・佐賀へ、それから伊勢と舞台を転々とした。
「あまちゃん」は劇中歌で「地元に帰ろう」と歌われるだけあって、ヒロインあき(能年玲奈、現のん)は東京から母・春子(小泉今日子)の地元にやってきてすっかり気に入り、一旦東京に戻るも、また地元に戻っていくのである。
いま、日本は、地方から都市に人口が流出し過ぎて、その状態に歯止めをかけたいところ。地元に戻って生きる主人公も増えるかもしれない。
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