昨年、第32回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門での正式出品以来、ようやく再び作品をたくさんの方々に見ていただける機会が巡ってきました。
必死にもがきながら、なんとか生きているという点では、今こういう時代だからこそ、より多くの方々に見ていただきたいなと思います。
とても思い入れのある作品がついに公開という運びとなりました。去年の冬に撮影をしたのがうそのように状況も大きく変化し、映画の可能性を自分自身考える日々が続きましたが、私にできることは人の生活における不安ややるせなさに、そっと手を添えることではないかと思っています。
出演者、スタッフ、すべての人が全力でクリエーティブにかかわってくださった作品が公開になること、本当に誇らしく思います。
セックスワーカーの彼女たちを通して、見てくださった方々が力強く踏み出せますように。そう願っております。
雑居ビルにあるデリヘルの事務所。バブルを彷彿させるような内装が痛々しく残っている部屋で、華美な化粧と香水のにおいをさせながらしゃべくっている女たち。
カノウ(伊藤沙莉)は、この店でデリヘル嬢たちの世話係をしていた。女たちは冷蔵庫に飲み物がないとか、あの客は体臭がきついとか、さまざまな文句を言い始め、その対応に右往左往するカノウ。
店で一番人気の嬢・マヒル(恒松祐里)が仕事を終えて店へ戻ってくる。マヒルがいると部屋の空気が一変する。何があっても楽しそうに笑う彼女を見ながら、カノウは小学生の頃にクラス会でやった「カチカチ山」を思い出す。
「みんながやりたくて取り合いになるウサギの役。マヒルちゃんはウサギの役だ。みんな賢くてかわいらしいウサギにばかり夢中になる。性悪で嫌われ者のタヌキの役になんて目もくれないのに…」。
ある時、若くてモデルのような体系の女が入店してきた。彼女が入店したことにより、店の人気嬢は一変していった。
その不満は他の女たちに火をつけ、店の中での人間関係や、それぞれの人生背景がガタガタと崩れていくのだった…。
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