殺人犯か被害者か分からない息子への家族それぞれの“望み”が交錯する、雫井脩介原作のサスペンス映画「望み」(10月9日公開)。息子を信じたい父親・石川一登には堤真一、息子を守りたい母親・貴代美には石田ゆり子、ふとしたことから道を外す高校生の息子・規士には岡田健史が演じる。
「一登と貴代美という男女だからこその異なる考え方にプラスして、父親・母親目線という違いから2人が真逆の“望み”を持っていく物語。この誰もが想像できる気持ちで物語をグイグイ引っ張っていくのはすごく面白いです。そして僕が演じる規士は、2人を引っかき回すキャラクター。規士という人物をきちんと計算して演じたいと思いました」
ーー父親からは反抗期に、母親からは理解できない存在のように映る規士。
「規士を演じるにあたり、社交性をなくそうと思いました。両親から問い掛けられて一応返事はするけれど、誰に言っているか分からないよう、目線も合わせないようにして…。規士は物語の中心にいる人物なので、見る人によってどうとでも取れるニュートラルな位置にいることが大切で、突出したものを出したくなかったんですよ。そしてその感じが父親には反抗期、母親からはどこか変わってしまった不気味さに見えればいいなと。まぁあまりにもやり過ぎて、堤幸彦監督にマイクで音が拾えないと言われちゃいましたが(笑)」
ーー何を考えているか分からない規士がミステリアスに見えることで、物語がよりスリリングになっていく。
「規士のことを作ったのは僕ではなく、石川家の皆さんです。僕がいないシーンで規士がどういう人物でどんな感情を持ってそれがどのように映っていたのかを話し合ってくれましたから。僕はシーン数も少なく、提示できる情報は多くないので、やれることも限られていました。そんな中で規士の輪郭を際立たせてくれたことがありがたかったです」
ーー家族のそれぞれの立場と思いが描かれている本作。岡田の家族に対する思いに変化はあったのだろうか?
「僕はこの作品に出合う前から、人は孤独だと思っています。いくら血がつながっていても僕は親のものでもないし、いくら親にこれだけ愛していると言われても分からないこともあるし…。もちろん愛情を注いでくれていることはありがたいし、もちろん好きですし、リスペクトもしています。でも、僕の全てを僕でない人が理解することはできないんですよ。だからこそ人は愛し合うことですごく幸せを感じるんじゃないかな。この作品を見て、改めて人は孤独なんだということを感じました。とはいえ、僕は父親になったことがないので親の気持ちは分からないですけど。僕に子供ができたときに、親ってこういう気持ちだったんだと痛感することがあるのかもしれないですね」
ーー今回、夢を絶たれてしまった高校1年生を演じた岡田。学生時代にやり残したことはあるのだろうか。
「いっぱい恋愛したかったし、友達とちょっとしたやんちゃなこともやりたかったです。僕はそれらを全て犠牲にして野球に情熱を注いできたので。ただ、その選択肢には後悔はないです。やりたかったという煩悩はやっぱりありますけど(笑)」
取材・文=玉置晴子
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