「ぼんくら2」岸谷五朗、時代劇は『日本人を感じる』

2015/11/28 08:00 配信

ドラマ

放送中の木曜時代劇「ぼんくら2」に主演する岸谷五朗が時代劇の魅力を語る!(C)NHK

毎週木曜夜8時から放送中の木曜時代劇「ぼんくら2」(NHK総合)が、12月3日(木)の放送で最終回を迎える。主人公の同心・井筒平四郎(岸谷五朗)が、顔なじみの植木職人・佐吉(風間俊介)の母親を殺した犯人を追って、複雑な事件の背景を暴く物語だ。今回、平四郎を演じる岸谷五朗と、制作統括の真部斎氏を直撃。作品の見どころに加え、近年少なくなってしまった連続時代劇への思いを聞いた。初回は、岸谷が、演じる側から見た時代劇の魅力と、より面白く時代劇を見るためのアドバイスを語る。

――まずは、前作「ぼんくら」から1年ぶりの第2シリーズということで、撮影に入られたときの印象をお聞かせください。

同じ京都の撮影所で、ちょうど1年ぶりの撮影に入ったのですが、スタッフが前回と同じ大小(の刀)、雪駄、かつらを用意してくれていました。撮影は、長屋のオープンセットでのシーンから始まったのですが、そこに松坂慶子さん演じる煮売屋のお徳さんがいて。演じる僕たちは1年間違う世界にいたのですが、井筒平四郎たちは「ぼんくら」の世界でずっと生きていたのだなと思いました。

1年ぶりの撮影で、「すぐに役に戻れるだろうか」と思う部分もありましたが、監督のスタートがかかった途端、あっという間に1年前と同じ感覚が湧き上がりました。居心地のいいスタートでしたね。

――第1シリーズはどのようなところが視聴者に受け入れられたと思いますか?

原作が宮部みゆきさんの時代劇ミステリーということで、ちょっと独特な世界でしたよね。ほかの作品と共通するところがあまりなくて、それが受けたのではないかと思いますね。

――第2シリーズもそうですが、時代劇でありながらミステリーの要素が非常に強いですね。一方、主人公である平四郎の魅力はどういったところにあるとお考えですか?

平四郎だけではなく、たとえば弓之助(加部亜門)たちもそうですが、宮部さんの作るキャラクターがとても面白いですね。平四郎に関して言えば、基本的に彼は「面倒くさい」という言葉の中で生きているのですが、彼なりに気に食わないと思うこともある。面倒くさがりのぼんくら同心が、そのときは珍しく重い腰を上げるんです。それが、作品のスパイスになっていますね。とても愛くるしくて共感できるキャラクターだと思っています。

――地上波連続時代劇の放送枠は、現在、この木曜時代劇と大河ドラマだけという状況です。そこで、ここからは岸谷さんの時代劇への思いについても伺いたいと思います。まずは、時代劇を演じるときと現代劇を演じるときとで心持ちの違いはありますか?

時代劇になると、 (本番前の)準備の時間が3倍くらいかかりますね。でも、そのスタンバイの時間というのが、すごく大事なんですよ。きちんとかつらを合わせて、(かつらの下に)羽二重をして、雪駄を履いて…そうやって段階を踏んで、現代から江戸時代にワープする感覚なんですよね。

「江戸時代なんて、そんなはるか昔のことが分かるかな」とは思うのですが、襦袢(じゅばん)や着物を着て帯を締めて…という過去の歴史の中で行われてきたことをすると「間違いなく、われわれの先祖はこの世界にいたのだな」と思うんですよ。それはやはり日本人だからなんでしょうね。

演じてきた中で特に印象に残っているのは、’03年の正月時代劇「またも辞めたか亭主殿〜幕末の名奉行・小栗上野介〜」(NHK総合)。小栗上野介とその妻の話です。脚本が鄭義信という在日韓国人の作家で、日本人ではない彼の視点だからこそ書けた作品だと思っています。本当に時代劇って面白いですね。

――魅力的な作品が多いですが、一方で若者を中心に時代劇離れが叫ばれて久しいです。「ぼんくら2」の撮影中は、スタッフの皆さんと時代劇の今後について語り合うといったことはありましたか?

「ぼんくら」のスタッフは重鎮が多いんですよ。今までいろんな作品を作り上げて、大ヒットを重ねてきた人たちだから、我々はそれを継承しなければいけないなと思っています。学ぶものはたくさんあるので、もっと聞いて残していかないといけませんね。

僕自身も、舞台で若い俳優に立ち回りを教えることがあります。若い俳優でも若いなりの役がありますからね。スタッフも、若くて優秀な人は実はたくさんいるんですよ。

――新たな視聴者の獲得も一つのテーマになるかと思いますが、時代劇を普段見ていない層に、こういうふうに見ると面白いというアドバイスをお願いします。

せっかく見るのですから、作品の時代背景は知っていた方がいいかもしれませんね。歴史は知れば知るほど面白いので、調べると絶対好きになると思うんです。何か作品が放送されていたら「これはどういった時代だろう」とちょっと調べてもらって…特に今はインターネットで簡単に調べられますし、背景を知った上で見ると、また違う見方ができると思います。

――では、最後に「ぼんくら2」の話に戻ります。12月3日(木) にいよいよ最終回を迎えますが、楽しみにしている視聴者に向けてメッセージをお願いします。

今回のシリーズでは、謎は佐吉の親である葵(小西真奈美)を殺したのは誰か、という一点に絞られています。クライマックスに近づくにつれ、容疑者はたくさん出てきましたが、これが宮部ワールドの妙で、全部裏切られてきました。そんな事件の決着がどのようにつくか、意外な結末も楽しみにしていただきたいし、平四郎たちがどのように真相を暴くかも楽しみにしていただきたいです!

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