毎週木曜夜8時から放送中の木曜時代劇「ぼんくら2」(NHK総合)。主人公の同心・井筒平四郎(岸谷五朗)は、顔なじみの植木職人・佐吉(風間俊介)の母親が殺された事件を追ってきたが、ついに12月3日(木)に最終回を迎える。
今回、平四郎を演じる岸谷五朗と、制作統括の真鍋斎氏を直撃。作品の見どころに加え、近年少なくなってしまった連続時代劇への思いを聞いた。今回は、大河ドラマ「龍馬伝」(’10年、NHK総合ほか)などの演出を手掛けた真鍋氏が、時代劇の存在意義を語る前編。作り手の目線で、視聴率至上主義のテレビ業界の現状へ疑問を投げ掛けた。
――ちょうど1年前に「ぼんくら」第1シリーズが放送されましたが、当時、視聴者からの反響はいかがでしたか?
おおむね良かったと思います。ただ、キャスティングに好意的な意見が寄せられた一方、なかなか入り組んだ話なのでドラマにすると分かりづらいという意見もいただきました。それを踏まえて、今回は分かりやすくするために、かなり整理してすっきりさせたつもりです。
――原作は宮部みゆきさんということで、時代劇としての魅力もミステリーとしての魅力も持った作品ですが、特にターゲットとした層はありましたか?
もちろん、時代劇なので時代劇ファンというのが一つですが、宮部さんの女性的な視点で書かれているから、女性の方にも見ていただきたいなという思いはありましたね。
――若い人にも多く読まれている作家さんですが、ドラマに関しては若い人の反応は感じますか?
若い人にとっては、やはり時代劇はとっつきにくいのでしょう。 “同心”“岡っ引き”といった時代劇用語や、作品のベースとなる時代背景を知らないことで、話がピンときていないようです。私たちが子供のころは、分からないなりに楽しめていた記憶がありますが、(時代劇の舞台から)あまりにかけ離れた時代になったので、それも難しいのかもしれません。
――そうした若者の時代劇離れもあり、現在、連続時代劇の放送枠が減っています。そのことについてはどう考えですか?
視聴率で言うならば、時代劇の先行きは悲観的に考えざるを得ないでしょうね。ただ、だからといって失くしていいものではないと思います。どの国にでも、その国のかつての姿を描いた“時代劇”がありますし、受け入れられている。それは、自分たちのルーツに対する興味ですから、それが欠如していくということは大きな問題だと思います。
時代劇はあくまでフィクションですし、ドキュメンタリーのように当時を精密に再現しているわけではないですが、一番とっつきやすく、その当時の生活を垣間見ることができるものです。だから、もっと一般的に、その他のジャンルのドラマと同じように見られるものになればと思います。
――連続ドラマとして時代劇を放送する一番の意義はどこにありますか?
時代劇は視聴率をあまり取れないという流れの中で、時代劇を作るのをやめようと言うことは簡単です。ただ、一度作り方のノウハウを失ったら、数年たってもう一度やってみようといっても絶対にできません。
民放も毎年時代劇の特番を放送されていますけど、撮影はほとんど京都。東京では、時代劇のノウハウは失われつつあるんです。木曜時代劇は「ぼんくら」こそ京都での撮影ですが、多くの作品は東京で撮っています。そうすることで東京の時代劇を作成する能力が維持できると思っているからです。
NHKですから、残すべきものは残さないといけない。NHKも近年、視聴率主義に流されつつあるように感じますが、それは全くの本末転倒で、むしろNHKは、そういう商業主義にはじかれる大事なものを守る役割を担っているはずです。実際、ドラマは製作費が非常に掛かりますが、その割に視聴率は伸びない。いわゆる“費用対効果”は少ないものです。だからといって、視聴率が取れないという理由で最初に時代劇を切る、という風潮はもどかしいものがあります。
【「ぼんくら2」制作統括が語る“時代劇の自由さ”へ続く】
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