【試写室】「早子先生―」は“大人の”教育ドラマ

2016/04/21 06:00 配信

ドラマ

主人公・立木早子を演じる松下奈緒

子どものころ、誰でも大人になれば結婚すると思っていました…。ええ、確かに私もそう思ってました。でも、まだ独身(32歳)です。

そんな、結婚について強く意識させられる松下奈緒主演の新ドラマ「早子先生、結婚するって本当ですか?」(毎週木曜夜10:00-10:54※初回は15分拡大、フジテレビ系)が、4月21日(木)にスタートする。

役作りで髪をバッサリ切った松下が、周囲に巻き込まれ、結婚に向かって動き始めることになった“三枚目”体育会系34歳独身教師・立木早子を演じる本作を、一足先に視聴して見どころを紹介する。

原作は'09年10月からgooブログで連載をスタートし、'10年3月からアメブロに移行した四コマエッセー漫画。

実話を基にした内容が女性を中心に人気を集めており、「早子先生、結婚するって本当ですか?」('14年)をはじめ、計3冊書籍化されている人気シリーズだ。今回はそれら3冊を基に、脚本家の水橋文美江がヒューマンドラマを紡いでいく。

東京郊外にある平和町小学校で1年1組の担任を務める早子は、マイペースでサバサバした性格で子どもたちから慕われていた。早子は同僚教師のミカ(貫地谷しほり)、梅子(佐藤仁美)、千駄木(八嶋智人)らとも良好な関係を築き、教師として充実した日々を送っている。

ミカ、梅子、千駄木はいずれも独身で、中でもミカは結婚願望が強く、合コンにも積極的に参加しているのだが、早子は彼女に何故それほどまで結婚したいのか、踏み込んだ質問をしたことがなかった。

とはいえ、実は早子自身も何げない日常の中でふと寂しさを感じることも。そんなある日、思わぬ騒動が起きる。早子の父・辰志(尾藤イサオ)が倒れ、病院に運ばれたのだ。幸い命に別状はなかったものの、この機会に店を畳んではどうかと両親に提案しようと考える早子。その矢先、早子は、居間の引き出しにお見合い写真が隠してあるのを発見する…。

“ドラマあるある”の「こんな美男・美女が結婚できないわけないじゃん!」という、お約束は置いておいて、ここまで感情移入しやすい主人公もいないのではないか。

松下という、美しく、ピアノもできて、頭も良い、高身長、恐らく地元じゃ負け知らず…の人が、見事にそれを“着崩して”、結婚できないというより、結婚をあまり意識しない女性を好演している。

同僚から、合コンの場所を駅前と聞いて「そんな近くで?」とリアクションしたり、牛タン屋さんで合コンすると聞いて「牛タン」の方に反応したり、実にリアル。身の周りにもそういうちょっと残念な女性は少なくない…と言ったら怒られそうだが。

それに、時折入る松下の感情を殺したナレーションも妙にリアルで、恐らくその辺の上辺だけいい子を演じている女性の“心の声”を聞けたら、こうなんじゃないかなと。それもまた反感を買いそうなので、このあたりは全てフィクションで。

ある種、早子の結婚を遠ざけている要因かもしれない家庭でのシーン。松坂慶子尾藤イサオという両親がそれはまあパンチの効いた夫婦だこと。こんな父ちゃん母ちゃんがいたら、毎日楽しいんだろうなあと。無理して結婚しなくてもいいよなあと思うのではないだろうか。

そして、松下の妹役の川栄李奈が実に実に、それはもう実に芸達者。表情の微妙な変化や、姉妹感。川栄が妹を演じると聞いた時に「この姉妹は無理があるんじゃ…?」と思ってしまった過去の自分を、殴ってやりたい。そのくらい、スッと姉妹に見えたし、本当に2人は初共演なの?と言いたくなるくらい、穏やかに長年一緒にいた空気感が画面からはみ出ていた。姉妹のやりとりだけでもヘビーローテーションで見ていたいくらい。

学校のシーンでは、八嶋と港先生役の間宮祥太郎による先輩後輩だけどどっちがどっちやねん!な掛け合い、結婚願望200%のミカ役の貫地谷、腐れ縁の彼氏がとにかく明るいけど、常に伏し目がちな梅子役の佐藤、相変わらずの存在感の本郷先生役・山内圭哉や新任の保健の先生役・小芝風花のメガネっ子姿…と、どこからでも楽しめる。

とにもかくにも、徐々に“婚活”を頑張りだす早子の奮闘と、早子を取り巻く周囲の人々の丁々発止のやりとりが見どころの本作。早子が家で素っ裸になるシーンも。

河童同盟、逆上がり同盟…そして婚活同盟と、事あるごとに同盟を結んで問題を解決していく姿は、コミュニケーションの大切さと「one for all, all for one」の精神も学べる、大人の教育ドラマ。面白いって本当ですか?と疑問符がつく人も、一度見れば、ズブっとハマってしまいそうな予感。

とりあえず早子先生、私も婚活同盟に入れてください。