唐突だが、ここ数年“おじさん”が熱いらしい。遠藤憲一や吉田鋼太郎、生瀬勝久ら、毎クール主演級の役どころで局をまたぎドラマに出演している。その他いわゆるバイプレーヤーと呼ばれる位置ですさまじい存在感を放つ、木下ほうか、手塚とおるや正名僕蔵なども引っ張りだこだ。
これは筆者のような若作りもほとんどせず、寄る年波に寄り切られているおじさん記者も出番ありかなあ。
そんな不毛なことを太陽が沈むころに思い浮かべつつお届けするのが…各局で放送されているドラマやバラエティーなどを事前に完成DVDを見て、独断と偏見とジョークに満ちたレビューで番組の魅力を紹介する、Smartザテレビジョン流の「試写室」。
今回取り上げるのは、上川隆也主演で12月3日(土)夜9時から放送されるドラマスペシャル「検事の本懐」(テレビ朝日系)だ。上川、新相棒の本仮屋ユイカの他、前出“おじさん”たちも活躍する。
本作は、“罪をまっとうに裁かせること”を信念に持つ米崎地方検察庁検事・佐方貞人(上川)が活躍する、SPドラマシリーズの第3弾。今回、佐方は東京地検特捜部の応援に駆り出され、前作「検事の死命」にも登場した大物政治家・大河内(寺田農)が絡んだ贈収賄事件の真相に迫る。
ざっくりのストーリーは……米崎地検検事・佐方と真生(松下由樹)は、東京地検特捜部の応援に駆り出されることに。
特捜部では大物代議士・大河内と、“技術技能支援財団”代表理事・増元敬清(六平直政)の贈収賄事件の捜査に当たっていたが、疑惑の渦中にいた重要参考人である、事業団の経理担当役員・園部勝也(稲田龍雄)が自殺。捜査の糸口が絶たれてしまい、上層部は焦りを抱いていた。
だが、いざ東京地検に赴くと、参考人の取り調べなどの重要な捜査は特捜部が行い、応援組の仕事はさまつなものばかり…。佐方は、事務官の加東栞(本仮屋ユイカ)からも「地方でのやり方はお忘れください」と冷静にいさめられてしまう。
そんな中、次なる鍵を握る人物と思われた事業団の経理責任者・葛巻利幸(手塚とおる)が行方をくらます。佐方は葛巻の残したメモを分析し、加東と共に彼の居場所に迫るが、結局見失ってしまう。
その後、佐方は特捜部の主任検事・輪泉琢也(正名僕蔵)から、葛巻の従兄・岩舘啓二(春田純一)の事情聴取を行うよう命じられる。逃亡中の葛巻の居場所を吐かせろという指示だが、岩舘には余命いくばくもない母がおり、その見舞いに行きたがっていた。それを知った佐方はある“策”を講じて岩舘を救う…!?
一方、週刊誌記者・兼先守(山口馬木也)は、強制捜査を取材した際、佐方の存在を知り、佐方の父・陽世(中原丈雄)が逮捕された29年前の事件を思い返す。今回の一連の事件と30年前の陽世の疑惑を絡めて書けば面白い記事になるとにらんだ兼先は、広島に調査に赴く。
あらゆる手段を講じて贈収賄の真相を闇に葬ろうとする大河内と増元。そして、検察のメンツを守ろうと躍起になる特捜部、佐方の父の事件の真相を暴き、検察を地におとしめようと狙う兼先と、それぞれ思惑が交錯する中、佐方がたどり着いた驚愕(きょうがく)の真相とは…?
第1弾の「最後の証人」から見ているが、このシリーズは安定感がある。つかめそうでつかめない、そした最後の最後までどうなるか分からない練りに練られた脚本にはいつも脱帽だ。
原作モノの難しいところで、あらかじめ原作を読んでいる人には結末や展開が予想できてしまうというのも、この作品に関しては当てはまらない。オリジナルの要素もほどよく加えているので、一度原作を読んでいる人でも楽しめるし、何よりキャスト陣が魅力たっぷり。
といっても今が旬のイケメン俳優とかアイドルで塗り固めるのではなく、ドラマ好きにはたまらない“技巧派”キャストばかり。150kmの直球を求める視聴者に90kmのスローカーブを投げるような感覚で、逆につい手が出てしまうのかもしれない。いや、何の話だ。
それはそうと、序盤に出てくる寺田と六平のツーショット。もう失礼を承知で言わせてもらうと、「贈収賄しています」って顔に書いてある感じのワルっぷり。ラスボスと取り巻きの幹部にしか見えない…。お二人とも大好きな俳優だが、ここまでドンピシャでハマリ役なのも逆に珍しい。
そのまま時代劇に持って行って、悪代官と越後屋の関係としてもすんなり見られそうだ。恐らく扮装を変えるだけですぐにイケるだろう。
同じく、いつもは越後屋な(失礼)手塚のヒヨっている感じも新鮮。イヤミな上司か悪役か太鼓持ちのイメージが強い彼だけに、今回のように絵に描いたような巻き込まれ感は違った魅力が味わえる。本当に巻き込まれただけなのか、悪人なのかは最後まで見て判断してもらいたいが、ファンじゃなかった人は特に彼の演技に注目してほしい。
今回の相棒・本仮屋演じる加東栞。これまでの倉科カナ、志田未来が演じたキャラクターともひと味違う魅力を放つ、ちょっぴり強気なキャラクターだ。特にこれまでの2人以上に強気な後輩っぷりが気持ちよく、ドMなサラリーマンが部下にしたい女性No.1なのではないだろうか? かくいう筆者もその気があるので、ぜひ弊社にスカウトしたいところだ。
そんなカミングアウトはさておき、逆に後輩との距離の取り方に悩む上司は、佐方のようにブレない姿勢でいつも通り接し、逆に巻き込むくらい気概を見せてほしい。そのためにはこのドラマで立ち居振る舞いを参考にしよう。
ただし、同じように振る舞ってただのマイペース野郎ってレッテルが張られることがあったとしても、弊社では一切責任を負えませんので、あしからず。
その他、“僕蔵さん”こと正名僕蔵のイケイケっぷりに、松下の姐さん感、そして山口馬木也演じるのフリーライターの取材力などなど、見るべきものはたくさんある。特に山口演じる兼先の取材力はすさまじい。どうやったらあんなに調べられるんだろうか。あの取材力は後輩たちにはもちろん、私も見習いたいところだ。
最後になってしまったが、今回の佐方。初めて知る佐方のルーツである父の存在と父の遺したもの。具体的なことは言えないが、佐方と父という軸から見えるストーリーも注意して見ておいてもらいたい。個人的には、ある場面で佐方が感情をあらわにする瞬間がたまらなく好き。どこで出てくるかは…お楽しみに。
何か宣伝っぽくなってしまっているが、この記事を読んだからその番組を見た、と言ってもらえることこそ“記者の本懐”なので、ひとまず「検事の本懐」をご覧あれ。
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