「真田丸」三谷幸喜を直撃 構想変えたのは“あの人”

2016/12/17 07:00 配信

ドラマ インタビュー

「真田丸」三谷幸喜が最終回直前にインタビューに応じた(C)NHK

大河ドラマ「真田丸」(NHK総合ほか)が、12月18日(日)の放送で最終回を迎える。脚本の三谷幸喜は、「新選組!」('04年、NHK総合ほか)以来12年ぶりに手掛ける大河ドラマで、堺雅人演じる主人公・真田幸村(信繁)ら登場人物たちを“いきいき” と躍動させてきた。

そんな三谷に、最終回を書き上げた感想や執筆中のエピソード、主人公・幸村に込めた思いなどを直撃。さらに、三谷自身の“思惑を超えた”という、ある登場人物についても語ってもらった。

――まずは、最終回を書き上げた率直なご感想を教えてください。

いつ書き上げたかは企業秘密ですが、例年に比べるとかなり遅かったらしいです(笑)。でも、本当のところ、書き上げたからと言って何かが終わったという気にはなりません。脚本は、あくまで作品の一部でしかないと思っているので、最終回のオンエアが終わってから、どう感じるかだと思うんです。

偶然ですが、最終回を書き上げた直後、10分後くらいに、堺さんから連絡があったんです。実は、堺さんは、うちの近所の整体に通っていて、彼にお子さんが生まれた時も、近くの喫茶店でプレゼントをお渡ししていました。

脱稿した日も「整体に来ているので、お茶でもどうですか?」ということで、僕も「これは会うしかない」と思って、堺さんと二人でコーヒーで乾杯をしました。それはすごくうれしかったです。

――作品全体を通して、幸村自身も含めて“敗者”や“偉大な父を持つ二代目”といったキャラクターが多く描かれてきました。彼らにスポットライトを当てた理由を教えてください。

大学時代に舞台「アマデウス」を見て、そこに出てくる宮廷作曲家のサリエリが大好きになりまして。彼自身は、モーツァルトの陰に隠れてしまったという男なのですが、彼は「自分は神から選ばれなかった人間だが、同時にそういう人たちの守り神となる」みたいなことを言うんです。もちろん、サリエリだってすごい作曲家ではあるんですが、当時の僕は、この先の人生に不安だらけで、自分の才能に疑問を持っていたこともあり、サリエリの言葉にとても励まされたんです。

今回、真田信繁を描くときに、信繁とはどういう人物なのかと考えていたら、彼は、決して人生の勝者ではなく、すべての、敗れていった者たちの代表であるように思えてきて。しかも同時に、彼は、偉大な父を持ち、それを超えようとあがき続けた人たちの代表でもある。であれば、それを前面に描くことで、物語自体が、悩める人々への応援歌になるのではないか、と考えました。

そう思うと、僕が戦国時代で好きな人たちは、みんな敗れていった人たちなんですよね。だから、武田勝頼(平岳大)も僕にとってはヒーローだし、石田三成(山本耕史)が中盤のメインになることも、豊臣秀次(新納慎也)の破滅を丁寧に描いたのも、決してたまたまではなく、最初から、やりたいことではあったんです。

――そういった目線で戦国時代を描く中で、より立場の弱い女性たちも魅力的に描かれてきました。彼女たちを描くうえで意識したことありますか?

自分の中で書き始める前から決めていたことがあります。

きり(長澤まさみ)もそうですが、当時の女性は名前も残っていないことが多いです。“誰々の娘”とか“誰々の妻”もしくは“母”…そうすると彼女たちを描く側も、その役割に縛られて、あるいは役割に沿ってしか描けない、という事態に陥りやすいんです。

でも、彼女たちも実際に生きていた人間である以上、“役割”ではなくて“役”として、キャラクターを作ってあげる必要がある。その姿勢を忘れてはいけないなと思いました。そのキャラクター付けを余計だと感じる人もいたかもしれませんが、彼女たちを“○○の××”から解き放つことが僕の仕事だと思ったので、それは意識しました。だから結果として、男性よりも女性の方がキャラの濃い人が多くなりました。

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