ザテレビジョンがおくるドラマアカデミー賞は、国内の地上波連続ドラマを読者、審査員、TV記者の投票によって部門別にNo.1を決定する特集です。

最優秀作品賞から、主演・助演男女優賞、ドラマソング賞までさまざまな観点からドラマを表彰します。

第118回ザテレビジョンドラマアカデミー賞最優秀作品賞 受賞インタビュー

「コタツがない家」Blu-ray&DVD BOX 2024年6月5日(水)発売 発売元:バップ (C)NTV

コタツがない家

家族というのは、不平不満も醍醐味のうち(櫨山裕子P)

受賞のご感想を一言頂けますでしょうか。

ありがとうございます。金子茂樹という大変才能があるのに、ヘンクツで怠け者な脚本家にやる気スイッチを入れるのが私の仕事の半分くらいなので、こうした賞を頂けるのは思わぬプレゼントを頂いた気分です。

また、今回は今までさんざんお世話になった小池栄子さんの初主演ドラマということで、脚本家共々「彼女に面白い脚本で恩返しをしたい」というのがモチベーションの一つでした。その意味で、このドラマを評価していただいたことはその恩返しができたように思い、良かったなあと思います。

「コタツがない家」を作る上で、伝えたかったメッセージや意識されたことを教えてください。

個人的には「俺の話は長い」の進化版だと思っています。

「俺の話―」は30分二本立てでした。これはものすごいスピード感とネタの多さで、作っている私たちは「完璧だ!」と面白いのですが、初見のお客さんには飛ばし過ぎでついていけてないところがあったかもしれない。配信などで二度三度見ていただければ良いのですが、水曜10時の地上波という環境だと、もう少しゆったり見れるものにした方がいいんじゃないかとプロデューサーとしては思いました。あと「俺の話―」で金子君が根を詰めすぎで脱稿後入院したりして、この方式を続けたら死んでしまうんじゃないかという…。

そんな発想で「丁々発止の会話劇」と、「面倒くさい家族を抱えてしまった、万里江(小池)という引き受け体質の女性の生き方」を描くという二つの要素を組み入れたものになりました。


小池栄子さんをはじめ、家族4人の会話劇が大変好評でした。手応えや、家族のやり取りのシーンで意識したことを教えてください。

いやもう会話劇に関しては金子くんが天才なので…。ただ、その会話劇が「女性が主演の連続ドラマ」としてどういう意味付けになるのか、そこを必死で考えていました。笑えるけどあまりにひどいやり取りだと、「その後にどうフォローのシーンを入れようか?」みたいな。4話で順基(作間龍斗)が万里江に暴言を吐いて、「これはあまりにひど過ぎる。万里江がかわいそう過ぎる。じゃあここで悠作(吉岡秀隆)に慰めてもらえば、万里江は少し救われるのではないか」といったことです。

面白いときには役者さんがセリフを言いながらどこか素になってしまう瞬間があり、それが手応えと言えば手応えでしょうか。


SNSでの反響や、それによって現場の空気が変わったことなどがありましたら教えてください。

SNSに関しては初回だけは、視聴者の方々がこちらの制作意図に対してどういう受け止め方をするのか、ちゃんと伝えたいことが伝わっているのか…いろいろな見方をされるでしょうから、そこを確認するために見ます。もしかしたら大空振りをしているかもしれないので。

それ以降は見過ぎると気になってぶれるので、ほとんど見ないです。今回例えば、初回放送後に「『俺の話―』みたいに2本立てが良かったのに」という意見を結構見ました。でも、それで内容を大きく変更するようなことはしません。というか、それで変わるようなら私たちの覚悟は大したものじゃない。SNSとはそういうものだと思っています。


投票理由として、「緻密に計算された会話劇が楽しかった」「老人から若者まで、日本における家族の各年代の抱える象徴的なトラブルの素を抽出して、具体的にドラマ化した脚本力が素晴らしい」などの意見がありました。金子茂樹さんの脚本の素晴らしさはどこにあると思われますか。

彼と出会って10年以上になりますが書くと言い出すまでに3年くらいかかりました。

ほんとに怠け者なので…というか、「命を懸けて書く」という覚悟と「書ける」勝算が見えないと書けないんでしょうね。彼の中のハードルがとても高い。つまりそこが見えれば書けるので、書いてきたものに関しては面白いし素晴らしいです。よくもそんなことが書けるなと毎回思います。彼は脚本家界の絶滅危惧種なので、どうにか生きながらえてほしいと思ってます。

あと今回に関しては、2人とも家族を持っていて、そのことに関しては共通言語がいろいろあった感じです。実生活の中での経験やトラブルが、いろいろとドラマ作りの助けになりました。


最後に「コタツがない家」ファンへメッセージをお願いいたします。

ほぼ何も大きなことは起こらない、とてもニッチなこのドラマを愛していただきありがとうございます。「家族というのは、理想と比べての出来不出来を評価するものではなく、不平不満も醍醐味のうち」と、このドラマを通じて少しでも感じていただけたら幸いです。自戒と反省も込めています。
コタツがない家

コタツがない家

民放GP帯連続ドラマ初主演の小池栄子と金子茂樹脚本で描く、“笑って泣けるネオ・ホームコメディー”。44歳、やり手のウエディングプランナーの万里江(小池)は、若い頃から恋に仕事に全力投球で、欲しいものは全て手に入れたはずだった。しかし、気付けば夫・息子・父、3人のダメ男たちを養う羽目になる。

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