<35歳の少女>望美の愛読書「モモ」がドラマを通じて現代に鳴らす警鐘とは

2020/12/05 06:00 配信

ドラマ

心を閉ざしてしまった望美(柴咲コウ)(C)NTV

「結人君は、カメのカシオペイアだったんだ?」


「2020年って、モモに出てくる、時間どろぼうに乗っ取られた国みたい」と、なかなか周りになじめない望美。しかし、自分のせいで壊れてしまった家族を前に、「あたし、目覚めてからずっと、モモみたいに時間どろぼうに時間を盗まれたと思ってたけど…」「本当は、あたしがみんなの時間を盗んでたんだね」と落ち込んでしまう。

その姿を見た結人は、「苦しみを救えるかわからないけれど、お前のそばにいる」と告白。結人の気持ちを聞いた望美は「モモ」に登場するカメのカシオペイアの言葉「わたしがついている」と同じだ、と救われた思いになり、初めてのキスをする。

この言葉のように、同ドラマでは“望美=モモ”“結人=カシオペイア”として象徴的に描かれていると思われる。

「今は灰色の男たちの気持ちが分かる。少しでいいからさ…」「みんなが無駄にした時間、あたしにちょうだい!」


望美はアナウンサーに、結人は再び教師にとそれぞれ夢に向かって歩き出した2人だったが、厳しい現実を前に徐々に不協和音が生じてくる。さらに望美の思い出の家を売ることになり家族が集まるも、互いを責めるような激しい言い争いに。

ついに望美は「モモに出て来る灰色の男って知ってる? 街の人から盗んだ時間で生きてて、大嫌いだったけど、今は灰色の男たちの気持ちが分かる。少しでいいからさ…」「みんなが無駄にした時間、あたしにちょうだい!」と吐き捨て家族を見限ってしまう。さらに、またも夢を諦めようとする結人にも失望し、お守りのように持ち続けていたカメのぬいぐるみを置いて去ってしまうのだった。

「家族、友人、恋人、そんなもののために生きても裏切られるだけ」


第8話では、家族と結人の前から姿を消した望美が、動画サイトを使って“時間”の売買をあっせんするYouTuberになっていたことが判明。

これまでかわいらしい服装を好み、いつも明るく笑顔だった望美は、灰色の服に身を包み、無表情で、「モモ」に出て来る“灰色の男”のように変わり果てており、コンクリート打ちっぱなしの壁、灰色の家具が置かれた無機質な部屋で、「家族、友人、恋人、そんなもののために生きても裏切られるだけ」とYouTubeで語りかける。

「周りの人みんなを幸せにするモモだったはずなのに、みんなから時間を盗む灰色の男みたいになってる」


25年という時間を失い2020年に目覚めた望美が気付いたのは、多くの人が何も生み出さずに、“ダラダラ時間を無駄にしている”ということだった。望美は眠ってしまった25年の時間を取り戻したいという思いから、“暇を持て余している人から時間を買って、やることが一杯あって時間が足りない人のために使う”という仕事を始める。

「時間を売買したときの手数料と、アクセス数が爆発的に伸びて入ってくる広告収入」で自分の父親の年収を1カ月で稼ぎ、「ここから一歩も出なくても、食糧から何からとどけてもらえるし、ネットで必要な情報はすぐに手に入るし、世界中の誰とでもコンタクトとれる」と、ネット社会の恩恵をフル活用して2020年を“らしく”生きる望美。そして彼女は、SNSに夢中になり目の前のことに目を向けない、時間ばかりを使ってしまう現代人を「モモ」を通じて風刺するのだった。

しかし、そんな望美を見た結人は「周りの人みんなを幸せにするモモだったはずなのに、みんなから時間を盗む灰色の男みたいになってる」と感じてしまう。

一見、まさに現代社会のベンチャー企業の成功者のような望美。しかしその表情は暗く、さらに、10歳の頃の自分の幻影を見てしまう。10歳の自分に言われた言葉は「ひとりぼっちで全然幸せそうじゃない」だった。

実際、数多くのネットを介した成功や恩恵の裏には多くのSNSトラブル、不幸な出来事が絶えない。時間を削って人を介さず手に入れるお金、物、コンタクト。そこにどれほどの価値があるのか。それは人と人がとるコミュニケーションよりも大事なことなのか。ドラマを通じ、「モモ」は現代のわれわれに警鐘を鳴らしているように思われる。

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