様々なことを乗り越えた姉がある決意を固め、それを妹に告げる。姉の言葉を聞き、その心の内を感じ取った妹は、ボロボロと泣いた。
映画「羊と鋼の森」(2018年)の終盤の大事なシーンだ。演じるのは、実の姉妹である上白石萌音と上白石萌歌。姉の萌音は妹の萌歌の涙を見て、つられて泣いてしまった。するとカットがかかり、監督から「ここは泣かないほうがいい」と言われた。けれど「どう考えても泣いちゃうんですよね。妹が泣いてるし、言わなくても通じる何かがバシバシきてて」。セリフ以上に感情が伝わってしまうのだ。「姉妹じゃなければ起きない連鎖だったのかなって思いました。 同じDNAを持ってるからこその、もらい泣きだった」(「文春オンライン」2018年6月11日)。
兄弟・姉妹の俳優というのは、どこか甘美な魅力がある。それは、親子の俳優とはまた違った複雑な感情がそこに宿っているのを感じるからかもしれない。時期は多少前後したとしても、同時代にデビューし、浮き沈みを経験することも大きいだろう。もっとも比べられる存在であり、誰よりも知る同志であり、切っても切り離せない関係であり、永遠のライバルでもある。その関係性は見る者の想像を掻き立て刺激的だ。そんな中でも理想的なバランスだと思えるのが上白石姉妹だ。