【試写室】「ドラマ・ミステリーズ―」俳優たちの“狂気”にあっぱれ

2017/04/22 05:00 配信

ドラマ コラム


そもそも私自身ミステリー小説の類はあまり読まないタイプだが、ミステリードラマに関してはそんじょそこらのドラマ通よりも見ているつもりだったのだが、あまり見ないタイプのミステリーばかりで、とても新鮮な気持ちで見られた。

ヨイショはメリットがなければしない主義だが、さすがは「世にも奇妙な物語」や「ほんとにあった怖い話」など、質の高いオムニバスドラマ作りに定評のあるフジテレビと言わざるを得ない。

大泉洋はさえない区役所職員役


まず、見た順番に「情けは人の…」から。3篇の中でこれが一番どんでん返された。(気に入っている)

元々小澤のいい意味で目が笑ってない感じが好きで、彼が出ている作品は彼を追って見てしまうところがあるのだが、今作も向井を翻弄(ほんろう)する姿は、俳優・小澤征悦の真骨頂ともいうべきそれだ。たとえ、この作品が予想を裏切る結末だったとしても、彼のトリッキーな演技は期待を裏切らない。

それより何より、本作で一番ビックリしたのが大西利空という“実力派俳優”だ。恐らく今、誘拐された金持ちの子供を演じさせたら日本一と言ってもいいのではないだろうか。鈴木福や寺田心のように、天性のかわいらしさがある子供はあまたいるかもしれないが、彼はまた一味違う魅力がある。10年、20年と成長を見守りたいところだ。誰だよ。

もちろん向井の爽やかバーテンダー姿と初の誘拐犯姿もファン必見なのは言うまでもない。新たな彼の魅力が発見できそう。

そして「妻の女友達」。大泉のさえない区役所職員姿は、哀愁たっぷりで何だか切なくすらなってしまう。それも面白みのない“真面目父”って…共感しかない。子供はいないけど。

大泉といえば、最近ではリーダーシップを取る勇ましい姿や、TEAM NACSでのおちゃめな姿など、人たらしな印象も強いだけに、なかなか本作は新鮮に映った。だからこそ、狂気をはらんだ彼は心底怖いので、大泉の狂気の部分にもよ~く注目してほしい。

それに高岡早紀の“大スター感”も個人的には大好物だし、戸田菜穂の幸薄そうな演技もいい。これもしっかりどんでん返された。

それから3つ目は「恋煩い」。女子高校生時代から話は始まるのだが、土屋に岸井ゆきの井之脇海は制服姿も大人になってからの姿も全く違和感なく存在していて、自然。

冒頭の音楽室のくだり。誰もが土屋に「ってあんた、行っちゃうんかーい!」とツッコむことだろう。心してツッコんでいただきたい。でも、おまじない好きな人は、共感を覚えるかも?

ただし、もちろんお笑い感がある作品なわけではなく、何なら個人的にはこれが一番怖かった気がする。ミステリーというよりホラーでしょ!とすら。

3つの作品に共通するのが「どんでん返し」ということだが、うまくどんでん返すために3作品共に狂気をはらんだキャラクターがいる。このギャップを楽しんでほしい。

残念ながらどれも短編ミステリーなので、核心に触れることは何一つ書けないが(当たり前だ)、素直にどんでん返されてほしい。人間素直が一番であり、最初から懐疑的な目で見たら、何も面白くないはず。

と言いつつ、正直“カリスマ書店員”が選んだからってそんなに驚くような作品なのかなと懐疑的な目で見ていたのだが…。

きっと、みんな見終わったときには皆さんも私と同様に「オー! アメージング!!」と叫んでしまうだろう。