そんな中、松本から恵那に手紙が届いた。彼女が木村を介して送った手紙の返信だった。そこには、自白を強要されたときの様子が生々しく綴られ、「私は絶対にお嬢さんたちを殺めたりなどしていません」と書かれていた。そして、強要に屈したことを「私は弱い人間であります。情けない男であります」と嘆いた後、「しかしながら、私は決して殺人犯ではありません」と締めくくられていた。
恵那も拓朗も松本の無実への確信を強める中、当時この事件を追っていた斎藤(鈴木亮平)から、捜査の初期に「被害者がロン毛で細身の若い男とニコニコ笑いながら山へ入っていった」という目撃情報がいくつかあった、と知らされる。警察は最初、この男を犯人として捜査していたが、途中から松本に矛先を変え、ロン毛の男は無かったことにされてしまったのだ、と。
真犯人の可能性が極めて高いそのロン毛を捕まえれば、松本の無実が証明されるかもしれない…希望が見え始めたとき、「死刑囚3人の死刑を執行」のニュース速報が流れる…。
その3人の中に松本が入っているのかは、2話終了段階ではわからない。観ながら「どうなるんだろう」という客観的な思いではなく、「生きていて!」と心から願ってしまった。そのように、気づけばドラマの世界に引きこまれてしまっていた。松本がさくらの誕生日を祝うシーンでは胸が詰まり、松本の無実を訴えるさくらと共に涙し、えん罪や死刑囚の扱いについての木村の話を聞きながら恵那のようにドロッとしたものがこみあげてきた。また、「真実のように伝えたことの中に、本当の真実がどれほどあったのか」と話す恵那と同じように息苦しくなった。
しかし、深刻で苦しいだけじゃないのがこのドラマの魅力だ。拓朗が恵那をずっと目で追っているシーンで、彼の視線を「異様に強い眼力」と表現し、「その眼力、どうにかして」告げたときは笑ってしまった。このようにクスッと笑えたり適度に抜けるポイントが仕込まれていて、“緊張と緩和”のバランスが絶妙なのだ。
「没入感がすごい」「攻めまくり」「見ごたえありすぎ」など、ハマる視聴者が増え続けている様子。恵那や拓朗と共に、我々もパンドラの箱を開けてしまったようだ。
◆文=鳥居美保/構成=ザテレビジョンドラマ部
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