――撮影で印象に残ってるエピソードはありますか?
武田P:クランクインから5日間連続で、内容の濃いシーンの撮影したのは特に印象に残っています。特に平野さんは怒涛(どとう)の撮影内容で、せりふも難しいものがいっぱいありましたし、キャラクターを練り上げていくには十分な時間がない中、濃い内容で大変だったと思います。
ただ、私たちスタッフもまだ手探りの中クランクインをし、平野さんが1日、2日目にして黒崎をつかんでいらっしゃって、ここを目指して作っていけばいいんだっていうのが我々も分かり心強くなりました。
黒崎のさまざまな変装も本作のポイントの一つですが、平野さんはなんでも似合ってしまうので、それが逆に難しいなと思いました。毎回スタイリストさんとも話し合いながら衣裳を決めていますが、何でも似合ってしまうから変な人にはできないんです(笑)。
8話のホスト風の男みたいな平野さんの変装は、すごく奇抜な格好ではありましたが、金のメッシュとか他の人がやったら無理だろうっていうものまで、それっぽく見えてしまうのが詐欺師っぽくていいなと思いました。
――シリアスなシーンの撮影も多いかと思いますが、今の現場の雰囲気はいかがですか?
武田P:後半にかけて皆さんだいぶ打ち解けて、初期以上に雰囲気は良くなっていきました。台本上の内容はどんどんハードになっていってるんですけど、現場はわりと穏やかというか、楽しい雰囲気で撮影も進んでいます。
平野さんが新しい変装衣裳を着て現場に現れた時に監督やカメラマンが「お、今日もかっこいいですね」と声を掛けるというのが現場での定番のやり取りになっていたり、山本さんが絶対に使えないアドリブで現場を爆笑させたり、いい雰囲気だなと思っています。
――平野さん、黒島さん、三浦さんの魅力についてお聞かせください。
武田P:撮影が進んでいく中で、皆さん自分の役として現場にいらっしゃるので、台本にないような言い方などを監督に提案してくださいました。平野さんに関しては特に思うのですが、その提案が黒崎としての正解なんだなって思う場面が多々あります。
例えば9話の冒頭で桂木と別れを告げるシーンがあったのですが、台本にないような温度感が出てすごくいいシーンになったなと思いますし、黒崎をちゃんとつかんで黒崎として現場にいる、それがすごくいいなと思いました。
黒島さんも同じように、氷柱って基本真っすぐなんですけど、その真っすぐの中に揺れ動く感情みたいなのがあって、ただ純粋に正義感が強いっていう設定上の話だけじゃなくて、ちゃんとした感情の揺れ動きだったり、そのバランスがすごく後半にかけていくにつれて、どんどん出てきています。
それが黒崎と氷柱の関係性の切なさみたいなところにつながっていっているのかなと思います。見ていてどんどん魅力的になっているなと思いました。
桂木が本当はどう思っているのかというのは、「クロサギ」全体を通して分かりやすい部分は一つもないのですが、その分からないところが桂木の魅力だっていうのが念頭にあったんです。
個人的に好きなのは、桂木は黒崎とやり取りをしている時はぶっきらぼうな感じなんですけど、氷柱としゃべる時はちょっとイケメンになるところです(笑)。
ただ、後半の8話以降で氷柱が桂木のことを怪しむような場面になるところと、氷柱に9話で「ごめんね」と言うシーンでは本当にすごく怖くなって、氷柱に見せるあの顔はうそだったのか、どこまで計算されていたんだって、恐ろしくなりました。三浦さん、普段本当にお優しい方なんですけど、画面の中で見る桂木は怖くて、それがすごく見ている側として楽しめるポイントだなと思います。
那須田P:最初にイメージしていた、こんな役になって欲しいなというところは、お三方ともすごく出してくださっています。黒島さんも彼女のストイックさだったり、チャーミングさというのが後半特に垣間見えました。表現、お芝居、表情、それらがすごく長けているなと思いました。
三浦さんは平野くんたちのキャラクターとは違う意味で、人間の多面的なところや微妙なニュアンス、そこの奥に何があるのかを知りたくなるような、繊細さをすごく上手に出してくださいました。静かなエンタメを、三浦さんのお芝居で楽しませていただいているなと思います。
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