<エルピス最終回>えん罪疑惑、ついに完結 暗闇に射した希望の光で最終回もトレンド1位に

2022/12/27 18:27 配信

ドラマ レビュー

「私たちは真実を伝えるのが仕事でしょ」

大門副総理の告発報道を強行しようとする恵那とビビりまくる滝川(C)カンテレ


恵那は「ニュース8」の冒頭で、大門副総理(山路和弘)の“レイプもみ消し”を報道することに決め、亨の証言VTRを流すようにディレクターの滝川(三浦貴大)に頼むが、滝川は完全におじけづいて拒否。「簡単だよ、案外。私やったことあるもん」「番組がなくなるのは、よく考えるとそんなに大したことじゃないよね」と軽いトーンで言う恵那は、ビビりまくる彼の眼には狂ったとしか思えなかった。

「どんだけの人間に被害が及ぶと思ってんだ」と言う滝川に、「私たちは真実を伝えるのが仕事でしょ」と反論する恵那。圧力に屈して当時このVTRを流さなかったことで、その後生んだ多くの犠牲者に「すみません。番組の方が大事だったんで」と言えるのかと問う彼女を見て、このやり取りは、先日、松本(片岡正二郎)のえん罪を裏付ける決定的な報道をしようとした拓朗と、それを拒んだ彼女と同じだと思った。一瞬、「お前がそれを言うんか?」とイラッとしたが、「私はもう誰の信用も裏切りたくない。希望を奪うことは二度とやりたくない。できない」と続けた彼女に、やっと目が覚めたのだと希望が持てた。

決定的に「相克の関係」となってしまった恵那と斎藤(C)カンテレ


恵那の“暴走”を止められないと思った滝川は、斎藤(鈴木亮平)に連絡。「ニュース8」本番直前にスタジオにやって来た斎藤は、恵那の並々ならぬ覚悟を感じ取り「8:2で俺が負ける」と言いながらも、大門への告発をやめてほしいと頼んだ。この世界情勢が緊迫した中で副総理がスキャンダルで失脚したら、最悪、政権交代となり、国の信用は失墜、株も暴落…キャスターをやめれば済むような恵那が切っていいカードではない、と斎藤は熱弁をふるった。

恵那は斎藤の言い分にも一理あるとしながらも、この告発は「まぎれもない真実」だと言い、「“知らせない”というカードを切っている人はその責任を負えるつもりなのか」と反論した。自分に然るべき力が付いた時には、恵那の思いに応えてみせる、信じてくれ、約束する、と懇願する斎藤に、恵那は「本城彰の逮捕」と「今日以降、彰に関する報道に一切邪魔をしないこと」という交換条件を出した。

斎藤は、大門と本城の父親の関係には触れないことを条件に、恵那の要求を呑んだ。そして「今日のトップニュースで流せ。明日になったら、キミは事故か病気で出れなくなるよ」と脅しのような言葉を告げ、去った。

「正しいことをするのは諦めて、代わりに夢を見ることにしようよ」

ついに真犯人が本城彰だと示唆する報道をした恵那(C)カンテレ


恵那は拓朗に電話する。拓朗は今夜恵那が大門の告発をすると聞いて、いてもたってもいられずテレビ局のロビーに来ていた。いつ出せるか、二度と出せないかも分からない、本城彰が真犯人だと示すVTRは彼のバッグに常に入っていた。「キミ、最高!」。拓朗に抱きつき、「これ、流すよ!」と言って恵那はVTRを持ってスタジオに駆け戻った。

ついに長く暗い闇に一筋の希望の光が射した。報道を見るチェリー(三浦透子)、被害者の姉・純夏(木竜麻生)、新聞記者・笹岡(池津祥子)らの姿を見ながら心が震えて涙が止まらなかった。

本番終了後、恵那は拓朗と大盛りの牛丼をかきこんでいた。摂食障害を起こしていた彼らが笑顔で食事を楽しんでいる。それだけでも幸せだ。そして2020年、チェリーは松本と彼女が作ったカレーとケーキを笑顔で食べていた。14年前のチェリーの誕生日には1つだけだったケーキ。今日は2つある。今日が、えん罪が認められた松本の新たな人生を祝う“誕生日”なのだと思ったら、また泣けてきた。

彰が逮捕されたのかはわからないし、亨の死の真相もこのまま闇に葬られて大門もこのまま逃げおおせるのかもしれない。でも、発端だった“松本のえん罪”は解決した。「大門の失脚まで見届けたかった」というコメントもあったが、そうなったとしたら一気にファンタジーになってしまったように思う。「配慮」と言い換えられた「忖度」にまみれた現実社会に生きている我々は、そんなに簡単に勧善懲悪にならないことを残念ながら知っている。

拓朗に「この世に本当に正しいことなんて、たぶん無いんだよ。だから正しいことをするのは諦めて、代わりに夢を見ることにしようよ」と言った恵那。村井と二人でネットニュースの配信を始めた拓朗は、「今はまだどんな夢を見ればいいのか分からない」と言うが、これから彼が見る夢をまたいつか一緒に見たいと思った。

◆文=鳥居美保/構成=ザテレビジョンドラマ部