堤幸彦監督、映画を撮り続ける理由は「気持ちよく死ぬため」2.5次元俳優陣との初タッグでスキルに感嘆

堤幸彦監督の最新作「ゲネプロ★7」が4月21日(金)に全国公開(C)映画「ゲネプロ★7」製作委員会

堤幸彦監督の映画最新作「ゲネプロ★7」が4月21日(金)に全国公開される。「TRICK」や「SPEC」など数多くの人気ドラマシリーズや、「十二人の死にたい子どもたち」「望み」「ファーストラヴ」などの多彩な映画を手掛けてきた堤監督。今回タッグを組んだのは、2.5次元舞台を中心に活躍する俳優7名。和田雅成荒牧慶彦佐藤流司染谷俊之黒羽麻璃央高野洸、そしてオーディションで選出された三浦海里だ。本作は大人気7人組ユニット〈劇団SEVEN〉が新作舞台「シェイクスピア・レジェンズ」の稽古に取り組む中で、何者かの陰謀により、互いにすれ違いぶつかり合う姿を描くミステリー作品。堤監督にインタビューを行い、2.5次元俳優と初タッグを組んだ撮影の感想や、映画を撮り続ける原動力について聞いた。

2.5次元は「本当に実力がないとスターになれない世界」


──映画「ゲネプロ★7」は、企画・プロデュースの松田誠さん(演劇プロデューサー、元ネルケプランニング会長)から「オーディション番組で1位になった子を主役に映画を撮ってもらえませんか?」と声をかけられて、監督が快諾したところから始まったそうですね。快諾したのはどうしてだったのでしょうか?

松田さんとは、中目黒ウッディーシアターなどの小さな会場で、全くチケットの売れない作品を上演していたときからの、長い付き合いと長い信頼関係があったというのが前提で。さらに今回はオーディション番組の延長線上で、2.5次元舞台で活躍するスターたちで固めるという話だったので、興味深いなと思って「ぜひやらせてください」と言いました。

──2.5次元舞台のキャストで固めるということに興味を持たれたということですが、2.5次元作品にはどのようなイメージを持っていらっしゃいましたか?

新しいカルチャーですよね。いろいろなエンタテインメントビジネスがある中でも、本当に実力がないとスターになれない世界だと思います。いい加減な気持ちでやっていたら、特に『刀剣乱舞』なんて怪我もしてしまうだろうし。毎日毎日ものすごいスケジュールで芝居をして、その中で人気者になっていくなんて、とんでもない努力が裏にあるんだろうなと。僕も「魔界転生」や「巌流島」といった規模の舞台の演出をやらせてもらっていますけど、作るのは本当に大変だし、毎日お客さんに集まっていただけるなんて相当な努力が必要なので。こんなことを常にやっていらっしゃる皆さんはすごいなと思います。

──「ゲネプロ★7」は、シェイクスピア劇の主人公たちが真の主役を奪い合う究極の舞台「シェイクスピア・レジェンズ」に挑む俳優たちの姿を描いた物語です。最初に脚本を読まれたときの感想はいかがでしたか?

いやー、面白いなと思いましたね。爆笑しました。シェイクスピア作品は折に触れて見させてもらいますし、どの演劇人も「いつかはシェイクスピアを」と思うような、演劇人の共通言語でもある。それをうまくリミックスして、「シェイクスピア・レジェンズ」というテーマにしちゃうなんて。しかも、みんなシェイクスピアの登場人物を演じるときにはもうその姿勢になっているんですよ。みんな“あの”声の出し方になる。それも面白いなと思いました。あと、演劇が人の心を危うくしていくというところもリアルだなと思って。夜10時くらいの下北沢とか池袋の飲み屋にはそういう人ばっかりですから(笑)。

堤幸彦監督※WEBザテレビジョン撮影


キャストの殺陣に感嘆「刀に対する尊敬度が全然違う」


──舞台俳優が舞台作品を演じるという映画ですが、見せ方で工夫したのはどのようなところでしょうか?

そもそも彼らに対して「舞台俳優だから」という意識はなかったですね。特に三浦(海里)くんは、さすがオーディションを通過してきただけのことはあるなと思いました。三浦くん以外も、1から10まで説明する必要はなかったし、精神的なことで説明をした人はいなかった。ミザンス(配置)の説明と、掛け合いのテンポ感を指示しただけで。撮影も順撮りだったので、丁丁発止によって、嫌悪感が増して……という流れも、それぞれが作ってくれたのでやりやすかったです。

──さすが舞台経験の豊富な方々ですね。

うん。中でも特にやりやすかったのが殺陣。とにかく殺陣がうまい。そりゃあ「あれだけやっていればうまいでしょう」という感じなんだけど、刀に対する尊敬度が全然違う。俳優みんな、殺陣が好きで時代劇をやりたがるけど、彼らを見て学んでほしいと思うくらいすごかったですね。覚えるのも速いし。素晴らしいですよ。

迫力たっぷりな殺陣シーン(C)映画「ゲネプロ★7」製作委員会