いつか草なぎさんとご一緒したいと抱いていた思いが今作でかなったことを、撮影が終わった今でもうれしく思っています。現場で私が緊張していると「お絹ちゃんは僕の娘だから」と草なぎさんが声をかけてくださいました。
草なぎさん演じる格之進の娘であるお絹は、父を敬い、自分のやるべきことへ邁進できる素直な女の子です。格之進とお絹の確かな絆に触れながら育んだ時間は、何にも変えがたい温かなものでした。
そうそうたるキャストの皆さまの背中を追いかけながら、白石監督をはじめとするスタッフの皆さまと紡いだ日々が、たくさんの方々に届きますよう願っています。
白石監督とはいつかご一緒したいと、常々いろいろなところで口にしていました。そんな白石組の初めての時代劇作品に参加できることに興奮しました。
些細なことなのに、大人になったからなのか、組織の中にいるからなのか、素直に言い出せない。そんなきっかけが気付けば飛躍して、自分だけでは収まりのつかないことになってしまっている。
落語の噺がベースの今作は、現代人の我々にも共感できるポイントがたくさんある、身近なところで起こり得るストーリーです。監督が、先人へのリスペクトを持って作り上げた今作は、世界のお客様にも見ていただきたい、日本の時代劇になると思います。
梶木左門役をやらせていただきました、奥野瑛太です。これだけの豪華なメンバーに囲まれて時代劇に参加できたこと、大変うれしく思います。
殊に草なぎさんは、物心ついた頃からブラウン管を通して拝見しておりましたので、今回現場で自らが梶木左門として執拗に柳田様(草なぎさん)の背中を追いかけていることに、若干の違和感とかなりの興奮を覚えました。比喩的な意味でも物理的にも、劇中ではかなり背中を追いかけていると思います。
その都度、気配や色を変えていく背中を。それはそれは心地の良い広い背中でした。歴史上これほど武士の背中を見た人はいないのではないかと思うくらい堪能させていただきました。ありがとうございました。
私としましては、いつもお世話になっている白石和彌監督の、時代劇という新たなチャレンジにまたご一緒させていただけるということだけでも幸せであるのに、草なぎ剛さんとシーンを共にできるという光栄極まりない日々でございました。
撮影中はカメラや照明などのセッティング中にずっと立ったまま待っておられる姿を拝見し、私なんぞは、ただだらしなく座って着物が着崩れていく様が情けなく思えた記憶がございます。
初めて現場を共にする共演者の方がどのように演技を仕上げていくのかを見ているのが趣味と言える私なのですが、草なぎさんは瞬発力がすさまじく、用意したものに拘らずに撮影現場であらゆる物事を感じ取って空間に溶け込んでいくというスタイルと見受けられました。研ぎ澄まされた感性と経験のなせる技であると感服した次第です。
映画「碁盤斬り」どうぞよろしくお願いいたします。