<半分、青い。>鈴愛の“朝ドラヒロイン感”はずれた人生に共感の声「現実ってこうだよね」

2018/10/01 06:56 配信

ドラマ

やりきったら、振り向かない


自分の才能と向き合い、最後には限界を思い知った(C)NHK


これまで連続テレビ小説でたびたび描かれてきたヒロイン像は、これと決めたことに向かってひたすら突き進む女性だ。強い動機づけがあり、そこに向かって壁を乗り越えていくストーリーはわかりやすく、視聴者の共感も呼びやすい。1回見逃してもすぐに展開に追いつくこともでき、毎朝15分という放送形態にもマッチする。こうしたヒロイン像は“朝ドラの王道”と評されることも少なくない。

著名なファッションデザイナー姉妹の母がモデルの「カーネーション」(2011年下期)や児童文学「赤毛のアン」の翻訳者をモデルにした「花子とアン」(2014年上期)、ニッカウヰスキーの創業者夫妻を描いた「マッサン」(2014年上期)、日本で初めて女子大学を設立した女性がモデルの「あさが来た」(2015年下期)など、何かを成し遂げた実在の人物に材をとった作品も多い。

半分、青い。」の鈴愛は、そうしたヒロイン像とは大きく異なる人生を歩んできた。これと決めたことにひたすら突き進む部分は同じだが、全力でぶつかってボロボロになるまで格闘したらすっぱりと思いを断ち切り、いっさい振り向かない。

たとえば、漫画家を辞めた鈴愛は“絵を描くこと”を封印した。描くことはプロの腕前なのにもかかわらず、花野にせがまれても絵を描くことはなく、「私はペンを持ったら、本気出しそうで怖い。ただ者ではないと思われたらかなわん」と冗談とも本気ともつかぬ言い訳をしてみたりする。鈴愛が再び絵を描くまで、漫画家を辞めてから8年以上が経っていた。

「人間には“生きる力”がある」


リヤカーで五平餅を売り歩いた時期も…(C)NHK


楡野鈴愛の物語が、わかりやすく共感を得やすい王道ストーリーから逸脱してまで表現したもの。それは“生きる力”だ。

脚本家の北川悦吏子氏は、ドラマスタート前にザテレビジョンのインタビューで「どんなことが起こっても人間には生きていく力があるということを伝えたいんです。“人間って強いよ”、そうじゃない?と問い掛けたい」と語っていた。

9歳で左耳の聴力を失った鈴愛は、ショックから立ち直り「お母ちゃんに“鈴愛の左耳はこんなに楽しい”って見せたい」と、律の協力を得てゾートロープを作り上げた。

何があっても、それを生きる力に変えて前に進む。そんな鈴愛の生き方は、最終回まで変わることはなかった。漫画家から百円ショップ店員、突然の結婚と、離婚。センキチカフェからの再上京。東京でのリヤカー引きから、そよ風の扇風機開発――。その都度目の前のものに全力でぶつかり、文字通り七転び八起きの半生を送った鈴愛の“生きる力”の逞しさは、たびたび話題を呼んだ。