一家に一人妖精エンケンが欲しいと書いたばかりで恐縮だが、こんな子が職場に一人いたらとても心強いだろうな…。誰かって? 何を隠そうアタルさんだ。
何かを頼んだとき「えっ、私もいいんですか?」とか「喜んで」とか笑顔で言われたら、自分でできることでもついつい頼みたくなっちゃうわ。
最近の後輩なんて「えっ、私がやるんですか?」とか「無理っすね」とか、少し新たな仕事を頼もうもんなら忙しいアピールで回避することしか考えてない。それこそ「働き方改革」を盾にして。
それもあって、「特殊能力」に関しては抜きにしてもアタルのように何でも楽しんで仕事をするような子は職場に一人いてほしい。あのサングラス姿には驚いたが…。
個人的には、ある場面でこっそり先回りして「ノンアルコ―ルにしておきましたから」がグッときた。ノンアルコールが主戦場の筆者としては、あのシチュエーションでああいう神対応をされたら、まあほれるだろうな。(チョロい)
働かなくても怒られ、働き過ぎても怒られ、上も下も横も顔色をうかがって、とにかく現代の会社員は大変。
だからこそドラマくらいは「そんなの現実じゃありえねーよ!」とくだを巻いてストレス解消、というか現実逃避したい…そういう人も少なくないはず。
ご多分に漏れず筆者もそう。それもあって、いわゆる“お仕事ドラマ”を見るときは警戒する。
実際見てみるとキャラクターはやけにリアルで、「うわ、こんな先輩・後輩・同僚いるいる」って現実に引き戻されたりもしたが、見終わった後には不思議と痛快な気分になったし、なぜか働く意欲すら湧いてきた。
そんな初回でフィーチャーされるのは、自分の選択に自信がなく、常に緊張し、内心ビクビクしている“正社員”の神田(志田)。自信がないからこそ他人の顔色をうかがってヘラヘラ笑っちゃうタイプだ。
本当に志田未来という女優は、神田というキャラクターの不器用さとは裏腹に何をやらせても器用にこなす。
神田の仕事のできない子っぷりがあまりにもリアルなラインを突き過ぎていて、時々新人時代の自分を見ているような気がして、目をそむけたくなる場面もあったほど。と、偉そうに言うほど今もできた人間じゃないが…。
あと、このチームではやや虐げられているが、目黒(間宮祥太朗)のようなキャラも現代では貴重なんじゃなかろうか。
いつ会社に来ていつ帰ったの?ってくらい、あいさつもしないし、声も出さない若者が多い中で、やや浮いていたとしてもあそこまで気持ちのいいあいさつをする若者がいたら無条件で応援したくなる。
間宮はコワモテのヤンキーチックな役より、こういうひたすら明るい感じの青年役の方が感情移入しやすくていい。
逆に品川役・志尊淳の気の抜けたキャラは新鮮。とはいえ、若手屈指のカメレオン俳優だけに今さら何が来ても驚きはしない。恐らく1話目なので新鮮に映ったけど、あっという間に見慣れるというか、役をモノにしちゃうのだろうな。
他にもいろいろと興味深いキャラクターはいるものの、個人的には板谷由夏演じる大崎の中間管理職っぷりに共感。
上は上で勝手なことを言うし、下には突き上げられるけど、NOとは言えないし、NOと言うくらいなら自分が無理してでもこなしちゃう責任感とある種の「自己犠牲」のかたまりのような人。
こういう人こそもっと評価されるべき。板谷姐さんが演じているからこそ魅力を感じるのかもしれないが、このチームの部下になるなら間違いなく大崎の部下になりたい。
そして遊川脚本の素晴らしさについては今さらあらたまって言うまでもないのだが、才能がある人というのは何でもできるのだな。連ドラ初演出とは思えない安心感。
特に主演の杉咲の表情の変化、背中で語るオーラの変化、ふとした時の視線など、全てに理由を持たせるような演出は見事だし、もちろんそれをちゃんと体現する杉咲もさすがだ。このヒロイン、かなり新しい。
この作品に限らず、タイトルやキャストだけでドラマを見るのを敬遠するって人もいるかもしれないが、アタルにはたぶんいい意味で裏切られるはずなので、食わず嫌いせず一度自分の目で確かめてみては?
個人的には、正直なところ働き方改革というより、この人見知りな自分を改革する術を教えてほしい。
そのためにも、アタルにどうすればいいのかを占ってもらえないかな。
文=人見知りシャイボーイ
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