<いだてん>皆川猿時が阿部サダヲを絶賛「やっぱり天才なんだと思います」

2019/08/10 06:30 配信

ドラマ インタビュー

「いだてん―」で松澤一鶴を好演している皆川猿時(C)NHK

過酷な撮影に「死ななくてよかった」


――水泳に取り組んだことによって、水泳に対しての印象などは変わりましたか?

僕が練習したのは日本泳法というもので、基本頭を水面から出した状態で泳ぎます。いわゆるバタ足じゃなくてアオリ足だし、結構違いがあるんですよ。

先生の「日本人は昔、海洋民族だったんです」という話から始まり、「え?そこから?」みたいな(笑)。最終的には「水の中が楽しいと思ってもらえたら、私たちにとっては大成功です」と言われました。でも(日本泳法は)本当に難しくて、熱心に指導していただきましたが、なかなか楽しくはならなかったですね(苦笑)。

ただ、必死に取り組んだ結果、水の中で自然に浮くことができるようになったりして、「あれ?楽しいかも!」って一瞬思ったりもして(笑)。

無事泳ぐシーンの撮影が終わって、もう行く必要もないのに近所の温水プールに行ってみて…。確認したかったんでしょうね。そしたら全然泳げなくなっていました。そんなに楽しくもないし(笑)。

撮影中だけではありましたが、松澤一鶴として、水の中が楽しいという感覚にはちょっとだけ近づけたかなと思います。日本泳法をみんなで披露するシーン(8月18日[日]放送)もありますので、ぜひともご覧いただきたいです。

このシーンを成功させるために、みんなで一生懸命頑張ってきたので、結束力はありましたね。

――結束力があったという日本泳法でのシーンの撮影を終えた後は皆さんで盛り上がったりしたのでしょうか?

本当だったら盛り上がるんでしょうけど(苦笑)。撮影したのが4月の上旬で、ちょうど寒の戻りが来た時期だったんです。

気温一桁の中での夜の撮影で、温水プールではあるもののそんな状況なのでもう冷たいんですよね。

そんなわけで、撮り終わった直後は安堵感の方が大きかったです。もちろん若い俳優さんは「やったー!」って達成感があったかもしれませんが、やっぱり僕は年を取っていますから…。阿部くんも言ってましたよ、死ななくてよかったって(笑)。

――世界的に活躍する水泳選手も多い今の水泳界の礎を築いたともいえる松澤さんですが、皆川さんはどのような方だと捉えていますか?

松澤さんは家業を継ぎながら後輩の指導に当たっていた方なんです。ただただ強い水泳選手を育てたいという思いだけで、何の見返りも期待しないで。田畑さんに「温水プール作れ」って言われたら作ったり(笑)。

田畑さんのことも本当に好きだったんだと思います。「この人に頼まれたら断れない」みたいなところがあったんだろうなぁ。

劇中で斎藤工くん演じるかっちゃん(高石勝男)に、まーちゃん(阿部演じる田畑)のすごさを説明する場面があったんですけど、結局、まーちゃんの魅力をうまく伝えることができないんです。二人は理屈ではなく、気持ちでつながっていたんだと思います。

松澤さんは理系の方なので精神論だけでなく、こう泳いだ方がいいんじゃないか、と理論づけて指導をしていたそうです。

僕は全然理系ではないし、どちらかというと「いいから頑張れ!」みたいなタイプ(笑)。

プロデューサーさんから「いつもの感じだと困ります。大卒で!」とはっきり言われていたので、賢く見えるように頑張りました(笑)。

――松澤さんを演じたことによって、水泳選手を見る目が変わったりはしましたか?

日本泳法の練習は、ものすごく疲れるんです。本来は2時間の練習だったんですけど、体力が持たなくて1時間半で終わりにしていただいた日もありました。

一緒に練習していた俳優さんの中には、昔オリンピック候補選手だった方もいたんですけど、現役時代は1日8時間泳いでいたんですって。もうね、意味が分からない(笑)。

くじけずに練習を積んで、泳いで泳いで、で、また泳いで…。僕には全く想像できません。尊敬します。