初回から第10話まで全ての回で2ケタ視聴率をマークするなど注目を集める「グランメゾン東京」。視聴者の心をつかんだ最大の要因は、人間味あふれる登場人物たちの魅力だ。
アレルギー事件を起こし、“日本の恥”とまで言われた尾花をはじめ、料理が何よりも好きなのに実力不足で挫折を味わってきた女性シェフ・早見倫子(鈴木京香)、「エスコフィユ」時代に犯したミスに囚われ続ける祥平など、登場人物たちはみな弱さや後悔を抱えた不完全な存在だ。そんな面々が仲間との出会いを通して自分と向き合い、自信を手にしていく過程こそが、ドラマの最大の見どころだろう。
10話では、祥平も自らの過去を乗り越えてレストラン「グランメゾン東京」に正式に合流。ギャルソン・京野(沢村一樹)の「できたな、最高のチームが」というせりふに、視聴者からも喜びの声があふれた。
その「グランメゾン東京」に真っ向から対決を挑む丹後学もまた、不完全であるがゆえに魅力的なキャラクターだ。
人気店「gaku」を背負うプレッシャー、時には非道な手段も用いる江藤への不信感、そして何より自分自身が納得できる新メニューを開発できない悔しさ… “もう一人の主人公”と言いたくなるほど丹後は料理に誠実で、葛藤や苦しみといった人間らしい感情にさいなまれている。
そんな丹後の人物像に“生身の人間らしさ”を与えているのが、演じる尾上菊之助の表現力だ。丹後は、真摯に料理に向き合い、最高のひと皿を追求する真面目な料理人。二ツ星から三ツ星に昇格するためには“独創性”が必要なこと、それが自分には決定的に不足していることを自覚している。菊之助は、そんな丹後の劣等感や焦りを、繊細な表情の変化で表現する。
第9話の祥平が完成させたマイタケ料理を味わうシーンでは、祥平の持つ独創性に対する驚きと憧憬、嫉妬の色をその顔にかわるがわる浮かべ、複雑な心境を生々しく映し出した。第10話では、柿谷に「丹後さんって優秀なスーシェフがいなかったら自分一人で料理作れないってことですよね?」と侮辱され、悔しさをにじませたが、それは明らかに柿谷ではなく自分自身に向けられた感情であった。
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