映画「花と雨」は映像で語った青春映画!? 土屋貴史監督にインタビュー「ラップの世界に言葉を付け足しても意味がない」

2020/08/24 15:00 配信

映画 独占

映画「花と雨」(C)2019「花と雨」製作委員会


笠松将主演の映画「花と雨」(Blu-ray&DVD発売中、各動画配信サービスにて配信中)で、長編商業映画デビューを果たした土屋貴史監督。

ヒップホップと出会い、成功と挫折を繰り返しながら成長していく青年・吉田(笠松)の姿を、激しくかつ美しく描いた音楽&青春ムービーはいかにして生まれたのか、土屋監督に話を聞いた。

「花と雨」を聴いた当初は「自分の人生とは遠い話だと思った」


日本のヒップホップ界で“レジェンド”と称されるアーティスト・SEEDAのアルバム「花と雨」を原案にした同名映画「花と雨」。

フリーのディレクターとしてTVCMや、「Perfume」や「水曜日のカンパネラ」「ゆず」「Björk」など多くのアーティストのMVなどを手掛けてきた土屋貴史監督にとって、初の長編映画となった。

――実現までの経緯を教えていただけますか?

「名古屋を拠点にビートメイカーとして活動しているRamzaさんの作品がとても好きで。完全に自主制作で彼のビートを使って短編映像を撮ったんですね。その作品がラッパーの界隈で少し話題になったみたいで、SEEDAさんからも『すごく良かったから、一緒に映画を作りませんか?』という内容のメールをいただいたんです。で、最初は半信半疑だったんですけど、SEEDAさんが日本のヒップホップ・シーンに理解のある藤田晋さんに話を持っていって、本当に映画を作れる状況になったんです。そうなったら、もちろん断る理由はなくて」

――それぞれの思いが連鎖して生まれた作品ですね。1979年生まれの土屋監督はSEEDAさんとほぼ同世代ですが、SEEDAさんの作品は以前から愛聴してたのですか?

「はい。最初に聴いたのはI-DeAさんのコンピレーション『self expression』(2004年)でした。アルバム『花と雨』(2006年)もリリースされたタイミングで聴いていて。ただ、自分の人生とは遠い話だと思って、その頃はインスト中心のものの方が好きだったこともあり、個人的にはそこまで響かなかったんです。時間が経ってから、その真価がわかってきたという感じですね」

――本作の特色として、ストレートな伝記映画というわけではなく、SEEDAさんの伝記的な内容がリリックに刻まれていた『花と雨』というアルバムの、リリースから約14年を経ての映画化というところがユニークです。本作の成り立ちを、観客はどう解釈したらいいのでしょうか?

「まず、言えないことが多すぎる人は、本当の意味での伝記映画は作れないのかもしれません」

――特に日本では…ですよね。

「そうですね(笑)。ただ、SEEDAさんというラッパー、そして『花と雨』というアルバムは、日本のヒップホップの中でもリアルを追求している側のラッパーであり作品であるので、『花と雨』を映画化するということが、リアルを追求する作業であったのは間違いないです。『花と雨』のリリックの内容やそこで起こっていることをなぞるのではなく、あの作品の中にあったリアルを追求していくという」