笠松将主演の映画「花と雨」(Blu-ray&DVD発売中、各動画配信サービスにて配信中)で、長編商業映画デビューを果たした土屋貴史監督。
ヒップホップと出会い、成功と挫折を繰り返しながら成長していく青年・吉田(笠松)の姿を、激しくかつ美しく描いた音楽&青春ムービーはいかにして生まれたのか、土屋監督に話を聞いた。
「花と雨」を聴いた当初は「自分の人生とは遠い話だと思った」
日本のヒップホップ界で“レジェンド”と称されるアーティスト・SEEDAのアルバム「花と雨」を原案にした同名映画「花と雨」。
フリーのディレクターとしてTVCMや、「Perfume」や「水曜日のカンパネラ」「ゆず」「Björk」など多くのアーティストのMVなどを手掛けてきた土屋貴史監督にとって、初の長編映画となった。
――実現までの経緯を教えていただけますか?
「名古屋を拠点にビートメイカーとして活動しているRamzaさんの作品がとても好きで。完全に自主制作で彼のビートを使って短編映像を撮ったんですね。その作品がラッパーの界隈で少し話題になったみたいで、SEEDAさんからも『すごく良かったから、一緒に映画を作りませんか?』という内容のメールをいただいたんです。で、最初は半信半疑だったんですけど、SEEDAさんが日本のヒップホップ・シーンに理解のある藤田晋さんに話を持っていって、本当に映画を作れる状況になったんです。そうなったら、もちろん断る理由はなくて」
――それぞれの思いが連鎖して生まれた作品ですね。1979年生まれの土屋監督はSEEDAさんとほぼ同世代ですが、SEEDAさんの作品は以前から愛聴してたのですか?
「はい。最初に聴いたのはI-DeAさんのコンピレーション『self expression』(2004年)でした。アルバム『花と雨』(2006年)もリリースされたタイミングで聴いていて。ただ、自分の人生とは遠い話だと思って、その頃はインスト中心のものの方が好きだったこともあり、個人的にはそこまで響かなかったんです。時間が経ってから、その真価がわかってきたという感じですね」
――本作の特色として、ストレートな伝記映画というわけではなく、SEEDAさんの伝記的な内容がリリックに刻まれていた『花と雨』というアルバムの、リリースから約14年を経ての映画化というところがユニークです。本作の成り立ちを、観客はどう解釈したらいいのでしょうか?
「まず、言えないことが多すぎる人は、本当の意味での伝記映画は作れないのかもしれません」
――特に日本では…ですよね。
「そうですね(笑)。ただ、SEEDAさんというラッパー、そして『花と雨』というアルバムは、日本のヒップホップの中でもリアルを追求している側のラッパーであり作品であるので、『花と雨』を映画化するということが、リアルを追求する作業であったのは間違いないです。『花と雨』のリリックの内容やそこで起こっていることをなぞるのではなく、あの作品の中にあったリアルを追求していくという」
■映画「花と雨」HP
https://phantom-film.com/hanatoame/
出演:笠松将
大西礼芳 / 岡本智礼 / 中村織央 / 光根恭平 / 花沢将人 /
MAX / サンディー海 / 木村圭作 / 紗羅マリー / 西原誠吾 /
飯田基祐 / つみきみほ / 松尾貴史 / 高岡蒼佑
監督:土屋貴史 原案:SEEDA・吉田理美
脚本:堀江貴大・土屋貴史
音楽プロデューサー:SEEDA
製作:藤田晋・中祖眞一郎
制作プロダクション: P.I.C.S. 配給:ファントム・フィルム