ザテレビジョンがおくるドラマアカデミー賞は、国内の地上波連続ドラマを読者、審査員、TV記者の投票によって部門別にNo.1を決定する特集です。

最優秀作品賞から、主演・助演男女優賞、ドラマソング賞までさまざまな観点からドラマを表彰します。

第120回ザテレビジョンドラマアカデミー賞助演女優賞 受賞インタビュー

(C)TBS

堀田真由

今年の上半期は“紫ノ宮一色”…いまだに「アンチヒーロー」ロスです

「アンチヒーロー」(TBS系)の紫ノ宮飛鳥役で助演女優賞を初受賞した感想をお聞かせください。投票した人からは「紫ノ宮の冷静さと時折見せる人間らしい動揺のコントラストが良かった」「法廷での長セリフは、アナウンサー並みに滑舌が良くてすごかった」という感想が寄せられています。

ありがとうございます! 「アンチヒーロー」は撮影中から大きな反響がありましたが、まさか私がこんな賞を頂けるとは思いませんでした。主演男優賞の長谷川博己さんはもちろん、自分の役にまで多くの方に関心を持ってもらえたことを実感しています。
撮影の5カ月間この作品だけに集中し、今年の上半期は“紫ノ宮一色”でした。そのぶん、より深く理解できた役柄だったので、そうして成長できたタイミングで賞を頂けたことが、本当にうれしいです。


長谷川さん演じる明墨の事務所に勤める若手弁護士の紫ノ宮。どんな人だと思って演じましたか。

芯が強くてプライドが高く失敗を恐れている。だから、見えないところで努力をしている人で、すごく不器用だとは思います。この役に決まったとき、飯田和孝プロデューサーが「今まで見たことのない堀田さんを見せたい」と言ってくださいましたが、演じてみると、私と紫ノ宮には重なる部分が多いと感じました。

紫ノ宮が努力した末に弁護士になったように、私も天才型ではなく、セリフを覚えるのにも時間がかかるし、全てを軽やかにクリアしていける人間ではない。特に、このドラマは説明セリフがとっても多く、長谷川さんは私たちの比にならないくらいの量をしゃべっているので、そこで私が間違えるわけにはいけないというプレッシャーもありました。


紫ノ宮の父は藤木直人さん演じる倉田功刑事。その父がある事件で隠蔽をしていたのではという疑いが出て、紫ノ宮は父親を問い詰めます。そのシーンの堀田さんは、迫真の演技だったと評判になりました。

「アンチヒーロー」はうそと真実が表裏一体になっている作品で、紫ノ宮も父がずっと隠蔽していたことの真実を求めていきました。第5話、実家の食卓でお父さんを問い詰める場面が、藤木さんとの初めてのシーンだったのですが、逆にそのおかげで久々に会った不器用な親子の空気感が出て良かったと思います。

第1話から3話までは紫ノ宮がどういう人物か分からないミステリアスさを出す必要があり、第4話、5話でやっと父とのことが分かって、その上で、父が逮捕されて悲しいだけではなく、弁護士として歩んでいかなければいけないという展開が第6話から。全体を3部に組み立てて考えていたので、第5話は先に進むために乗り越えなければいけないシーンでした。


紫ノ宮は弁護士ということもあり、父親を正しい道に戻さなければならないという難しい立場でしたね。

そうですね。第9話、拘留されている父親に面会するシーンが一番印象に残っていて、紫ノ宮の気持ちとしては父のこんな姿を見たかったわけではないし、ただ再び父の笑顔を見たい。でも、そこで真実を求めていく彼女の強さに、私もグッと来るものがありました。5カ月かけた撮影の終盤だったので、予定調和ではなく、藤木さんと親子として向き合うと自然に生まれるものがあって、本番では、田中健太監督が最初から最後まで通しでやらせてくださったんです。

長回しの1回で終わった本番では、台本には書いていなかったのに予想もしなかった涙が出て、紫ノ宮が今まで背負ってきたものが流れ落ちる感覚を経験できました。miletさんの主題歌「hanataba」にもあるように、鎧をおろして…という感じでしたね。


紫ノ宮が単なる、けなげな娘で終わらなかったように、女性の描き方がアップデートできているドラマでもありました。瀬古成美判事(神野三鈴)のように女性でも不正をしてしまう人もいて…。

主人公は男性ですが、それぞれの女性の強さや立場の弱さも提示していたので、女性の時代でもあるなと感じました。今まであえて触れなかったことにしっかりと触れ、女性も男性も自立して平等な時代になっていくという、その始まりになったと思います。長谷川さんが私に「いつかは日曜劇場の主演をやるべきだ。目指すところはそこだぞ」と言ってくださって、私自身も女性としてできることをすれば時代を変えられるんだと、気付くきっかけになりました。


長谷川博己さんの言葉、すてきですね。共演はいかがでしたか。

長谷川さんは、そこに爽やかな風が吹いているような人です。法廷ドラマには弁護人席や被告人席から動けないとか、ルールがたくさんあって萎縮しちゃう場合もあると思うのですが、長谷川さんはそこを柔軟にアドリブも交え、意欲的にアレンジされていました。いろいろなことを考えながら楽しまれている感じがして、大先輩もこうやって0を1にしているんだと思うと、私たちも楽しまないと!という気持ちになりました。


長谷川さんは差し入れのお菓子を食べたいけれど我慢していて、でも、つい誘惑に負けて食べてしまった瞬間を堀田さんに見られたと…。

そうなんです。この作品は撮影の合間、誰も楽屋に戻らず、ずっと前室(スタジオセットの隣の控え室)にいて、ドラマ業界のことや他愛もないことを話したりしていたので、偶然、目撃してしまったんですけど(笑)。明墨という役は本当に膨大なセリフ量で、カロリーをたくさん消費したと思うので、長谷川さんが迷いながらもお菓子を手に取ったのを見て、「良かった、食べてる…」と思いました。


赤峰役の北村匠海さんとの共演はどうでしたか。

北村さんとは「風間公親―教場0―」(2023年フジテレビ系)で共演し、今回が2度目だったので、すごく安心感がありました。今回は紫ノ宮がお父さんとのことで苦しんでいたので、受けの芝居で寄り添ってくださいました。

実は同じ高校に通っていた1学年上の本当の“先輩”でもあるんです。その頃からずっと活躍されていたので、遠い存在のような気がしていたのですが、すごく包容力がある方で、撮影の合間は冗談を言って笑わせてくれました。そこに長谷川さんも乗ってきて…。長谷川さんと北村さんと3人でいる時間がすごく長かったので、「アンチヒーロー」の続編ができたらもちろん、別の関係性の役柄でも、またお仕事はしたいよねと、クランクアップしてからもお話ししました。


堀田さんは、「鎌倉殿の13人」(2022年NHK総合ほか)、「大奥『三代将軍家光・万里小路有功編』」(2023年NHK総合)などで注目され、既に主演作「たとえあなたを忘れても」(2023年テレビ朝日系)もありますが、今後の目標は、先程の話のように日曜劇場の主演ということになりますか?

そうですね。朝ドラや日曜劇場など、いろいろな枠があって、もちろんそこで目指したいものもあるのですが、「アンチヒーロー」では、みんなが楽しんで作ったものを届ける意味をすごく感じたので、まずは自分たちが楽しめてワクワクするような選択をしていきたいですね。

今振り返っても、本当に段取りをしっかりとやるチームで、誰かが納得できない状態では前に進まなかったので、すごくやりやすかったですし、家族のような関係性を築けた現場でした。終わった今もすごく恋しくて、いまだに「アンチヒーロー」ロスです(笑)。

(取材・文=小田慶子)
アンチヒーロー

アンチヒーロー

長谷川博己が“アンチ”な弁護士役で、7年ぶりに日曜劇場主演を務める。日本の司法組織が舞台となる完全オリジナルストーリーで、新たなヒーローが常識を覆す逆転パラドックスエンターテインメント。長谷川演じる弁護士は、“殺人犯をも無罪にしてしまう”危険人物。「法律」というルールを利用し暗躍していく。

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