ザテレビジョンがおくるドラマアカデミー賞は、国内の地上波連続ドラマを読者、審査員、TV記者の投票によって部門別にNo.1を決定する特集です。

最優秀作品賞から、主演・助演男女優賞、ドラマソング賞までさまざまな観点からドラマを表彰します。

第121回ザテレビジョンドラマアカデミー賞最優秀作品賞 受賞インタビュー

(C)TBS

西園寺さんは家事をしない

いつかまたどこかであの3人に会いたいですね!(岩崎愛奈P)

「西園寺さんは家事をしない」(原作:ひうらさとる)で作品賞を受賞しました。岩崎プロデューサーは初めての受賞ですね。

ありがとうございます。「西園寺さんは家事をしない」がたくさんの人に見ていただけて、愛してもらえる作品になったことを、本当にうれしく思っています。

読者、記者、審査員の票を総合しての受賞です。「松本若菜さん演じる“西園寺さん”をはじめ、どの登場人物もいとおしくて、毎週待ち遠しくなる作品だった」「令和にふさわしく、常識にとらわれない自由な価値観をコミカルに描いた」という選評が来ています。

ありがとうございます。やはりドラマは楽しいものでありたいなと思いましたし、「TBSの火曜ドラマは恋愛ドラマ」というイメージが定着している中、恋愛という枠には収まりきらない大きな意味での「愛」の形を描きたいと考え、明るく楽しく、そして優しいラブストーリーを目指しました。

20代やアラサーのヒロインが多いこの枠でアラフォーの主人公というのは大きな挑戦ではあったんですが、同世代からだけではなく幅広い世代、性別、ライフステージの方に愛される主人公になったのは、松本若菜さんの確かなお芝居の力と、かわいらしさや明るさというご本人の魅力のおかげだったと思います。


松本若菜さんが、アプリ制作会社で有能ぶりを発揮する38歳の女性、西園寺さん(西園寺一妃)を演じ、ハマり役と評判になりました。

お芝居も、明るく気さくなお人柄も、本当に魅力的な方で!今回、若菜さんがGP帯初主演のドラマに、私たちの作品を選んでくれたことがとてもうれしかったので、このドラマでは“今までに見たことのない松本若菜とその魅力”を視聴者の皆さんに余すところなく届けたい!と思っていました。最高にチャーミングな主人公を作り上げてくださった若菜さんに心から感謝しています。


松本若菜さんは主演女優賞部門で2位。「くるくる変わる表情、へんてこムーブなど、美人なのにコミカルな演技が上手く、声を出して笑ってしまった」「涙の芝居も素直になれない不器用さの表現も最高」などの評価が寄せられています。

本当に最強の主人公でした。若菜さんがこれまで演じてこられたシリアスな役もクセが強い役もとても魅力的でしたが、西園寺さんという等身大の女性を演じても素晴らしかったです。原作からそのまま飛び出してきたような絶対的主人公の雰囲気と華もありつつ、ちゃんと生身の明るくて強い女性がそこにいるというリアリティーとコメディー感を作ってくださったなと思います。


西園寺さんの会社に転職してきたシステムエンジニアの楠見くん(楠見俊直)役、松村北斗さん(SixTONES)が助演男優賞に選ばれました。「亡き妻のことで葛藤する楠見を見事に表現していた」「第1話で『僕の妻は亡くなりました』と打ち明ける場面の泣きの演技で心をつかまれた」という意見が来ています。

松村さんのお芝居には、現場で見ていても心が震えました。楠見くんは最初とっつきにくい人でしたが、西園寺さんとはどんどん距離が近くなり心を開いていく。その一つ一つの過程をすごく丁寧に演じてくださいました。

感情や西園寺さんへの信頼度のグラデーションのかけ方が、緻密で知的で。楠見くんの感情が大きく揺さぶられる場面では、言葉にできない感情を、そのお芝居で手に取るように伝えてくださる。人物の厚みをお芝居の力で作り上げてくださいました。


楠見くんにはルカ(倉田瑛茉)という4歳の娘がいて、「松村くんのリアルパパ感がすごかった」「シングルファーザーという難しい役どころを見事に演じた」という感想もたくさん来ました。

松村さんは瑛茉ちゃんの魅力を150%、200%と引き上げてくれました。松村さんがどんどんコミュニケーションをとって、そのおかげで瑛茉ちゃんは早い段階で心を開いて…。本当のパパのようにずっと瑛茉ちゃんのそばにいて、彼女がリラックスして4歳児らしさを出せるような環境を作ってくれました。撮影中も休憩中も本物の親子のようで、そんな2人の姿が現場を優しい空気にしてくれていました。


西園寺さんと楠見くんは事情があって同居し、お互いに心ひかれながら、なかなか結ばれない。松本さんと松村さんのコンビネーションはいかがでしたか?

お二人が補い高め合っている感じが、“西園寺さんと楠見くん”そのものでしたし、ルカちゃんも入れて自然と3人でいる。その空気感がナチュラルで、信頼や絆、心地よさや愛情が感じられるコンビネーションでした。お芝居の掛け合いのテンポも「息が合っているって、こういうことを言うのかな」と思うぐらい見事でしたね。


西園寺さんと楠見くんは「偽家族」と名乗っていましたが、大人たちの生活が小さい子ども中心になっていくのが、リアルでした。そこには岩崎さんの実体験も込められているそうですね。

はい。私にも2歳になる子がいます。子どもが生まれて家族が増え、そこで学んだこと、感じたことを意識しました。私だけでなく、脚本家チームや他のスタッフにも子育て真っ最中の人がそろっていたので、子どもを愛おしく思う気持ちや、逆に子どもからもらうものとか、そんな経験をみんなで詰め込みました。

それに自然体で愛らしい瑛茉ちゃんのおかげで、いつのまにか全てが彼女が中心になっていく感覚を現場にいる全員がリアルに体感できたのも良かったのではと思っています。


西園寺さんと交際する料理系YouTuberの横井さん(カズト横井)に、津田健次郎さんをキャスティングしたのはなぜですか。

火曜ドラマでは、いわゆる当て馬的な人物を誰が演じるのか注目されますが、今回はただの恋のライバルではなく、偽家族と作品の世界全体に温かく寄り添ってくれる存在にしたいと思いました。そこで津田さんが思い浮かびました。津田さんの落ち着いた大人の雰囲気と美しい声で発せられる言葉は、たくさんの人の心に響くと思ったんです。津田さんのおかげでドラマでも横井さんファンがたくさん生まれましたね。


ひうらさとるさんもSNSで盛り上げてくれていましたが、この作品にどのように関わられていましたか?

原作の魅力やメッセージをドラマでどう引き出し、伝えていくかを皆でたくさん話し合い、ひうら先生にもお会いする機会を頂いて、ドラマでの描き方や込めた思いを聞いていただきました。ひうら先生は、台本の案や完パケを見てくださった後に、毎回すごく丁寧な感想やアイデアをくださったんです。それが励みになりましたし、絶対にいいドラマにしよう!と士気も上がりました。

原作にある「迷ったときはワクワクした方へ」というセリフを現場のスローガンにし、その言葉を胸に全員で前に進みました。ひうら先生とキャスト・スタッフ、そして応援してくださった全ての方に感謝の気持ちでいっぱいです。


岩崎さんは今後どういうドラマを作っていきたいと考えていますか。また、「西園寺さん―」の続編はありえますか?

今回「恋愛というワードには収まりきらない大きな愛を描くラブストーリー」という壮大なチャレンジをしましたが、このテーマはきっと永遠ですし、もっともっと掘り下げてみたいと思いました。また違った愛の形を描くラブストーリーに、今後も取り組んでみたいと思っています。

それと、ライフワークにしたいのは「みんながもうちょっとだけ生きやすくなる方法」を考えられるようなドラマを作ること。「西園寺さん―」はまさにそういう作品でしたし、西園寺さんと楠見くん、ルカが、どんな未来に進んでいくのか、私もとても気になるので、いつかまたどこかであの3人に会いたいですね!

(取材・文=小田慶子)
西園寺さんは家事をしない

西園寺さんは家事をしない

ひうらさとるによる同名コミックを実写ドラマ化。徹底して家事をしない主人公・西園寺さん(松本若菜)と年下の訳ありシングルファーザー・楠見(松村北斗)とその娘が、ひょんなことから“偽家族”として同居することになる。そんな同居生活を通して「幸せって何?家族って何?」を考えるハートフルラブコメディー。

第121回ザテレビジョンドラマアカデミー賞受賞インタビュー一覧

【PR】お知らせ