ザテレビジョンがおくるドラマアカデミー賞は、国内の地上波連続ドラマを読者、審査員、TV記者の投票によって部門別にNo.1を決定する特集です。

最優秀作品賞から、主演・助演男女優賞、ドラマソング賞までさまざまな観点からドラマを表彰します。

第121回ザテレビジョンドラマアカデミー賞主演男優賞 受賞インタビュー

撮影=西村康

目黒蓮

周りの人たちによっていろんな面を引き出してもらえたことが大きかった

受賞の感想を一言頂けますでしょうか。また、ある日突然6才の我が子と対面する青年・月岡夏という役柄を演じていた期間、どんなことを考えていましたか。

「海のはじまり」は僕にとって初めて企画段階から携わり、考え、俳優としても人間としても確実にステップアップできた大切な作品。終わってからもこんなふうに皆さんに思い出してもらえると、頑張った証が一つ残るようでうれしいです。撮影期間中は「自分がいざ、この主人公の立場に置かれたら何を思うだろう?どうするんだろう?」って、ずっと考えさせられてました。
考えても正解はないんだけど、子供を持つということについて今後も考え続けるきっかけになった。同様に、視聴者の方たちが「私だったら」「俺だったら」と考えていろんな意見をつぶやいてくれることも励みになってました。(娘の海役を演じた泉谷)星奈ちゃんを肩車して現場移動してた日々を思い出します。クランクアップの時は、明日からもう会わないってことが信じられなかったな…。


非常に丁寧な脚本と演出で多くの視聴者の涙を誘った作品でしたが、振り返って、目黒さんが特に心を揺さぶられたシーンを挙げるとしたら?

毎回のように葛藤や悩みがあって、そういうシーンは本当にいっぱいありましたけど…今ぱっと浮かんだのは、第1話のラストで海ちゃんが夏くんに生前の水季(古川琴音、海の母親の水季役)の動画を見せるところかな。

あの動画の中身は僕も、本番まで一切見てなかったんですよ。夏くんにとっては大学時代に別れてしまって以来、どんなふうに暮らしてきたかを全然知らなかった水季の姿。本番のスマホ画面で初めて見て、実際のファースト・リアクションで行きたくて、そういうふうにしてもらいました。あそこで一気に気持ちが入りましたね。

で、そこはずっと長回しで撮るシーンなんだけど、僕の感情の波が収まるまで監督もカットをかけられなくて(笑)。僕としてはそうしてもらえてすごく助かったんですけど、カメラマンさん的には事前に決まってたワークはもう終わっちゃったから、そこからはアドリブで動いたりしてます。チームみんなのあうんの呼吸で完成したシーンでした。


共演陣の出色の演技も話題でした。水季の母親を演じた大竹しのぶさん、水季に思いを寄せていた元同僚役の池松壮亮さん、現在の夏の恋人役、有村架純さん…。

本当に、皆さんから数え切れない刺激を頂きました。大竹さんは役への入っていき方というか、「用意、スタート」までの時間の使い方がすごく参考になるので、自分もまねしてみたり。

池松壮亮さんとご一緒するシーンはもう…毎回圧倒されてましたね。「うわマジか、すげえな」って。例えば監督と話してちょっとお芝居を変えるとその変化がめちゃくちゃ鮮明だし、込められたものがガン!って正確に向かってくるんです。それを受けた瞬間に僕も素直に感情が動く。

夏くんの演技を評価してもらえてるとしたら、そうやって周りの人たちによっていろんな面、いろんな表情を引き出してもらえたことが大きかったんでしょうね。夏くんって“受け”“リアクション”の方が多いキャラクターだから。

(夏の実父役)田中哲司さんとのシーン(第8話)も“受ける”ってことについて学んだ場面でした。あのお父さんの言動はいわゆるクズなんだけど、そういう相手だからこそ自分も、他の人の前では絶対に出せないちょっとクズな部分を吐き出せて、救われたりする。人間にはそんなところもあるんだろうなぁって。


第9話、夏と弥生(有村)が恋人関係に終止符を打つ駅でのシーンも、非常に反響が大きかったようです。

弥生さんと夏くんは、もともとはどこにでもいるカップルで、将来のことも考えながら平穏に過ごしていたんですよね。だけど第1話で(昔の恋人の訃報を知らせる)一本の電話が鳴った時から、どんどんいろんな課題に迫られて関係性が変わっていって…そして9話まで積み上げてきたお互いの複雑な思いがとうとうあふれるという、胸が苦しいシーンでした。

実際は終電後の駅で撮影してるので、彼女を乗せて走り去る車両っていうのは存在してなくて。ホームのベンチで一人、何もない空間を前にその情景をイメージしながら演じてるんですよ。だから彼女に向ける視線、電車の動きを追う目線などは「自分のタイミングでいいから」と言われて、想像力を集めてやってました。今だから言える裏話(笑)。

(取材・文=上甲薫)
海のはじまり

海のはじまり

目黒蓮が月9初主演を務め、「silent」のチームが制作する“家族”の物語。月岡夏(目黒)は、大学時代に南雲水季と付き合っていたが、突然彼女から別れを切り出され別れる。7年後、水季が亡くなり葬式へ向かった夏は、海(泉谷星奈)という名の6歳の女の子と出会う。夏は、海が水季の子で、父親は自分だと知る。

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