ザテレビジョンがおくるドラマアカデミー賞は、国内の地上波連続ドラマを読者、審査員、TV記者の投票によって部門別にNo.1を決定する特集です。

最優秀作品賞から、主演・助演男女優賞、ドラマソング賞までさまざまな観点からドラマを表彰します。

第121回ザテレビジョンドラマアカデミー賞助演女優賞 受賞インタビュー

撮影=阿部岳人

土居志央梨

本当に家族みたいなチームだったので、絶賛“ロス”中です

「虎に翼」の弁護士・山田よね役で助演女優賞を初受賞しました。

たくさん面白いドラマがあった中、読者の皆さんや記者さん、審査員の投票で選ばれたということで、まさかまさかの受賞でした。本当にうれしいです。しかも、主演女優賞は伊藤沙莉さんということで、一緒に受賞できたのも、すごくうれしい。沙莉さんとは今回、撮影で1年間を共に過ごしてきて、すごく仲良くなれましたし、彼女のことをとても尊敬しているんです。
伊藤さんを尊敬しているというのは、どんなところですか。

「虎に翼」は間違いなく沙莉さんが引っ張ってくれた作品でしたし、トラちゃん(主人公の寅子)の明るさというか、物事を切り開いていくエネルギーは、もともと彼女が持っているものなので、それに周りの人がどんどん巻き込まれていったという感じでした。私はその中の一人で、本当に“よね”と同じように、私も毎日、沙莉さんに会って元気をもらっていました。


よねは、寅子の明律大学女子部からの同級生。男性用のジャケットにズボンといういでたちでした。「男装があまりにハマっていた」「徹底した役作りで、男性社会と戦う女性を力強く鮮烈に演じた」という評価が寄せられています。

これまでの私は、わりと女性らしい役が多く、髪の毛が長くて巻いていて…という感じの人を演じてきたので、よねのようにボーイッシュというか、短髪でスーツを着ている役というのは、自分が一番想像してなかったので、びっくりしました。

よねは、セクシュアリティーがどうというより、女性扱いされることがイヤだったと思うんですが、当時(1935年ごろ)はジェンダーレスな服もないし、こうするしかなかったんですよね。でも、現代でも、ドラマが放送される前、私が衣装のスーツを着てスタジオの外に出ると、トイレでは「ここは女子トイレですよ」と言われたし、コンビニでも「あの人、女だよね?」という目でジロジロ見られました(笑)。でも、最初の段階でよねに近づけたようで、すごくいい体験でしたね。


よねのことをどんな人だと思っていましたか。

とっぴな人では全くないんですよね。よねは貧しい家庭に育ち、身売りしなければならなかったという重い事情もあり、そこからはい上がっていきたいという意志を持っている。その強さに私もすごくひかれたし、なんとか魅力的に演じられたらいいなと思いました。同時に、ちょっと離れたところから、よねの姿を見るような感覚で、彼女のことを心配しながら見守るという、まるでわが子に対するような気持ちに…。こんな感覚は初めてで、不思議でした。


では、寅子が妊娠して弁護士を辞めるとき「こっちの道(法律の世界)には2度と戻ってくんな」など、きついことを言うシーンでは?

「他に言い方があるでしょ!」と言いたかったですね(笑)。本当に親のような気持ちで、「でも、それがあなたのやり方なのね」と…。よねには、どうしても曲げられないところがあるというのは理解し、私だけは応援しようという気持ちでいました。


よねと一緒に弁護士事務所を開く轟太一(戸塚純貴)との仲もナイスコンビでした。

純貴くんは、実際に同い年なんですよ。今回初めて共演したのですが、とても面白い役者さんで、本当に出会えて良かったですし、よねと轟の性別を超越して強い絆で結ばれているという関係性を一緒に演じられて良かったです。本人は穏やかですてきな人で、その柔軟さにすごく助けられました。よねと轟の関係性には、あこがれますね。恋愛関係じゃなくても「どういう関係なんだ?」と問われないあの世界が、すごく心地よかったです。


前半の段階では「よねと轟がカップルになったらいいな~」という期待もありました。

そういう意見を聞いて、内心、「いや、いや違うんだよ…」と思っていました(笑)。


よねは、原爆裁判などの弁護人になり、最終週まで法廷に立つシーンがあって、もう一人の主人公といった感じで活躍していましたね。

やっぱり原爆裁判で、私は弁護人でトラちゃんが裁判官として、同じ法廷に立てたのは、むちゃくちゃ感慨深かったですね。学生の頃から共に法曹の道を目指し、何十年もぶつかり合いながらも一緒に過ごしてきて、ここで対面する…。朝ドラならではの、本当に一人の人生を生きたという感じがしました。


最終週、虐待されていた娘が父親を殺したという尊属殺裁判で口頭弁論をする、よねの姿が真に迫っていて、「よねのセリフに胸が熱くなった」という意見もありました。

ありがとうございます。私もやはりそこが一番、印象に残っています。ここでは、弁護士として成長したよねの姿を見せたかったし、本来のよねの優しさや正義感の強さが存分に出せる場面だなと…。

収録したのは現場全体のクランクアップの日だったので、この1年間のことを思い出し、壮大な物語に思いを馳せながら演じたことは、一生忘れないと思います。珍しく本番で緊張したし、15人の裁判官の前で男性に囲まれてスピーチするのは、土居志央梨としてもすごくいい経験で、強くなれた感じがしましたね。


よねの弁論の「子供である被告人は、服従と従順な女体であることを要求されるのでしょうか?」というセリフは、衝撃的でした。

なかなか、あんなことを言う機会はないですよね。すごいセリフだなと思いましたが、実際に現場でも、そう言うと、そこにいる人の心に響いて、ちょっと空気が変わった感じがしました。傍聴席にいるエキストラの人が「はぁ」と息を吐いたのが聞こえたりして…。この独特な空気を全て味わおうと思いながら、演じていました。

やはり吉田恵里香さんの脚本は「これを伝えたいんだ」という強烈なメッセージがある、素晴らしいもので、私たち役者は「ついていきます!」とエネルギーを燃やしながらゴールを目指したという感覚でした。


あの法廷シーンがクランクアップの日だったんですね。

もちろん純貴くんも一緒にいましたし、その後にラストカットを撮った沙莉さんをはじめ、みんなが法廷のセットに来てくれて、もう大集合っていう感じで、みんなでワーッと盛り上がって、みんな泣いていました。本当に家族みたいなチームだったので、いまだに「虎に翼」が終わってしまったというのは、信じられていない(笑)。すごく寂しくて、絶賛“ロス”中という感じです。

(取材・文=小田慶子)
虎に翼

虎に翼

伊藤沙莉主演で、日本初の女性弁護士で後に裁判官となった一人の女性を描く。昭和のはじめ、日本初の女性専門に法律を教える学校ができ、寅子(伊藤)らは自らの道を切り開くため法律を学んでいく。しかし、昭和13(1938)年、卒業し弁護士として世に出た彼女たちを待ち受けていたのは戦争に向かう日本だった。

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