――今回、映像表現としてこだわった部分はどんなところですか?
湯浅「いつもだったら、アニメーション的なデフォルメを大きくしたりするんですが、この作品が求めているのは、特殊な表現ではなく、淡々とした日常描写や人々の生々しさではないかと考えました。キャラクターデザイン含め、登場人物もできるだけ自然な感じに、ヒーロー的ではない“ごく普通”の人として描いています。追い立てられるように色々な出来事が起こる中で、それを実感する間もなく前に進んでいかざるを得ない、そんな彼らの気持ちを表現したいと思いました。
主人公たちが見えている断片以外は一切見えず、画面に起こっていることだけではすべてを理解できない形になっています。見る方も周りを想像しながら、起こる出来事を一緒に体験してくれれば良いなと思っています」
――作中の冒頭、登場人物たちが大きな地震に遭う場面が描かれます。“未曽有の災害”を描くにあたり、意識したポイントはありますか?
湯浅「僕自身が東日本大震災の時に感じたことを作品に反映させたいと思っていました。危険が迫っているという噂はあるのに、正しい情報がわからない。どんな行動をすればいいのか、正解を掴めずにずっとスマホで情報を探す。あの時、多くの人たちがこうした状況になったのではないかと思います。『信じられない出来事が起きたときに、人はどう反応してどう動くのか』ということを、自分の体験を反芻しつつ考えながら作っていきました」
――本作では現在の日本が描かれます。先ほど、当初から「原作のままでなくてもかまわない」という方針だったと伺いましたが、まさに今、2020年を舞台にした理由を教えてください。
湯浅「『日本沈没』は、これまで原作・映画・漫画と色々な形で制作されていますが、それぞれが意味を持ってその時代に描かれたはずなので、今描くにあたっても意味があった方がいいなということで、舞台を2020年にしました」
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